第46話 犬の寝息は案外大きい

 紅茶を飲み終えたら、フレイヤさんがさりげなくすすっとマグカップを受け取って片付けに行ってしまった。

 周りを見ると、思い思いの体勢でコボルト達は寝転がって、すやすやと寝息を立てている。これはこのまま朝まで寝ちゃう感じかな。

 一人(ナオさんは連れて行くけど)部屋に戻って寝るのも何か寂しいな。自分の部屋の床は相変わらず岩盤だし。

 と思ってたら、フレイヤさんがお布団セットを持って戻って来た。気が利き過ぎでは?


「ありがとう」

 お礼を言いつつ、布団が敷ける場所を空けるために膝立ちで移動する。

 枕も叩いて埃を落としてから敷布団の上に置けば、寝る態勢は万全だ。


「その前に……」

 世の中には何時でも良い用事も有るけれど、その日の内にやらなきゃならない用事も有るのです。


「ナオさん、お願いします!」

 スタート記念ガチャは一日一回だけ!

 明日二回引く事は出来ないのですよ。


「またかニャー。ナオさんはもうお眠なのニャー」

 私のお腹に顔を押し付けて、起きませんよとナオさんは主張して来る。

 知ってます。膝の上に乗ってるナオさんの身体が普段よりぽかぽかしてて、本格的に寝ちゃいそうなんだって事は。


「そこを何とか!」

 お願いしますって言いながら背中を撫でたら、前肢をにゅっと出してくれた。


「ありがと~。ナオさん愛してる」

 スタートボタンが肉球に当たる様に、白銀のプレートを下から押し当てる。

 

 何時もの様に軽快なドラムロールが鳴って、打ち上がった花火の中から一際大きく一発打ち上がる。

 これは期待できそう?


 煙が消えた後には、透明なスキルオーブの玉があった。


「【鑑定】」

--------------------

『【火炎魔法】のスキルオーブ

使用すると【火炎魔法】を覚える

煮ても焼いても食べられない 砕くとスキルも消失してしまう

落としても簡単に割れないが 衝撃には弱め』

--------------------


 うん、なんかこれ【木工】のスキルオーブの時にも見た様な文面だわ。

 よく考えると、何のスキルオーブかしか鑑定で分かって無いのよ。スキルの内容に言及して無い事ない?

 鑑定使えなさ過ぎ。


「ナオさん、魔法ですよ!」

 鑑定が使えない案件は、管理者マークが使えないんだからまあ仕方が無いとして、魔法ですよ。

 一気にファンタジー感が増すわよね。


「うるさいニャー。もうさっさと寝るニャー」

 興奮して膝の上のナオさんをちょっと揺さぶっただけなのに、怒ったナオさんにベムっと顔を叩かれてしまった。

 肉球はご褒美ですから!


 まあ、世迷言は置いておいて、あんまりしつこく騒いでいるとナオさんが本格的にお怒りになるから、スキルオーブに関しては明日に回して寝るとしますか。


 そうそう、気になる窯の進歩なんだけど、レンガの積み上げは終わって、今は目地材の乾燥待ちだそうです。

 乾燥したら、一回火入れをして目地材を固めるんだって。

 本格稼働する日が楽しみだわ。

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