第44話 方向性の迷子

「ええと、薬草は採取されるから普通に種を撒いて育てたんじゃ、到底足りないわよね」

 蜜を採取するための花畑とかだったら冒険者達に荒らされる心配も無いけど、薬草はお金になるからねえ。


「そういった場合は、オブジェクト設置で薬草の群生を選ぶと良いですよ」

 薬草畑を別に作っておいて、足りなくなったら移植とか? って考えていたら、白銀が教えてくれた。


「成る程ね」

 オブジェクトとして設置すれば、一定期間経つと元の群生に戻るんだとか。余り頻繁に採りつくされると復活しない様になるから、そうしたらまた設置するしかないらしいけど。

 どれぐらい採取されるのか分からないから、取り敢えず三か所ぐらい設置しておけば良いかな?


「ん? 種も少し欲しいの?」

 くいくいと袖を引かれて、視線を向ければアルラウネの一人が物言いたげにしていた。

 この子は他の事違って右耳の上に小枝が生えていて、髪飾りを付けているみたいに見える。

 どの種が欲しいのか、白銀のプレートを見せて聞いてみたら、体力回復薬の素材になる薬草の種と、魔力回復薬の素材になる薬草の種と、茸各種の駒木の詰め合わせを指差した。

 茸各種のは、薬の素材になる物や食用の珍しい物から毒茸までランダムで入っているらしい。アルラウネ達は駒木を持てば、どの場所に打ち込むのが適しているのか分かるらしい。


 取り敢えず必要だと言われた分をDPダンジョンポイントで購入してアルラウネ達に渡すと、嬉しそうに微笑んで森の中に行ってしまった。


「後は果物の生る木とか必要かしら?」

 と呟いたら、木を伐りにやって来ていたコボルト達の尻尾が一斉に振られた。

 ナオさんは基本的に肉食だからあんまり興味は無いみたい。


 コボルト達に聞きながら果樹を五本だけ選んで購入する。まあ一気に増やす必要は無いのよ。

 林檎が一本、みかんが一本、桃が一本、柿が一本、檸檬が一本。統一性が無いわね。

 ダンジョンの中は魔素が外よりも多いからか、特にこれといった季節で実が生るという事もなく、花が咲いては実が付きって感じで一本の木でも少しずつずれながら年中実が生るんだって。

 まあここら辺はおまけみたいな物だし、有ればラッキーぐらいで良いんじゃないかな。(実が生ったらうちの子達が早々に収穫してきそうな気もするけど)


 木は成長した状態での購入らしくて、苗木がぺろっと出て来るとかそんなんじゃないので、何処に植えるかプレートの地図上で指定しないとだった。

 自分よりも大きくて立派な木が出て来てどうにかしろっ言われても困るから、親切設計なのは良い事よね。


 二階の森エリア設置で当面しなければならない事も終わったし、後はコボルト達と木を切ったりする。アイテムボックスのスキルを持ってるのは私だけだからね。

 ついでにフレイヤさんに頼まれて窯用の薪も大量に作っておく。

 最初は慣れなくて手に豆が出来たりしたんだけど、スキルで治療しつつやけくその様に薪を割っていたら、【斧】スキルが生えましたよ。

 いや確かに、スキルを使っているとレベルが上がるんだから、同じ行動を繰り返せばスキルを覚えてもおかしくは無いんだけど……。

 私はどこに向かっているんだろうね……?

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