第41話 三度目の正直かしら?

「これもだめニャー」

 と、ナオさんはぷいっと横を向いてしまった。

 今日も私の両腕は唸らなかった様です。あーん。


 ちなみに本日の成果は【立派なお髭】だそうです。

 心なしかナオさんのお髭がピンっと張っている様に見えるわ。

 でも強さを求めているらしいナオさんには、お気に召さなかった様です。


 スタート記念ガチャの方は、Eランクのモンスターのマンドラゴラが出ました。

 引っこ抜かれると叫んで相手を気絶させるらしいんだけど、この子最初から土から出ているわね? この場合どうなるのかしら。

 大きさは大体五十センチ位。頭が蕪で、手足が付いている。頭が重いのか左右にひょこひょこ揺らしながら歩いているのが、ちょっと可愛い感じだわ。

 ご飯は特に要らなくて、お水と光さえ有れば良いっていうので、一階にある畑をお勧めしておいた。

 間違って抜かない様に気を付けないとだわ。


 そして今日もDPダンジョンポイント不足により特に出来る事も無いので、コボルト達がダンジョンの外に木を伐りに行ったりとかするのに付き合ったり、フレイヤさんが窯を作るのの邪魔をしたりして過ごした。


 DPが無いと序盤は何も出来なくなるから、もうちょっとチュートリアル的に軌道に乗るまではフォローが有っても良い筈だわって運営日誌に書いたのに、ダンジョン運営せずに生活環境整えるのにDP使ってるからじゃない?みたいな返事が書かれていた。

 まあ確かに、ちょっと台所とか水回りにDP使い過ぎちゃったけど、必要経費の範疇の筈よ。

 そもそもダンジョンをどうこうするのに足りないから、何も出来なくて生活環境整えただけじゃない。

 腹が立ったから、今日の運営日誌には特記事項を何も書かずに提出してやったわ。




 という訳で、明けて七日目。

 今日こそ唸れ私の両腕。


「むむむ」

 心を込めてナオさんを撫で撫でしていたら、ぽわっと光ったから、多分私のスキルが発動したんだろう。


「どうしたの、ナオさん?」

 今日のもお気に召さなかったのだろうか?

 別にこのスキルをナオさんだけに使い続けるのは、望む所だから良いんだけど。


「【属性爪】を覚えた。って出たニャー」

 どういう事にゃのかニャー。前肢にきゅっと力を込めて出した爪を覗き込みながら、ナオさんは首を傾げる。


「文字通りなら、爪に属性……つまり火とか風とかの効果を付ける事が出来るんじゃないかなあ?」

 ゲーム何かでも割と定番の性能だしね。


「こうかニャ?」

 出したままの爪を見ながらナオさんがそう言うと、爪の周りにもやもやとした赤色のエフェクトが発生した。


「火属性?」

 ちょっと触ってみたいけど、熱いかしら?

 気になるからそ~っと指先を伸ばして近付けてみたら、触れるか触れないかぐらいでピリリと痛みが走って、小さな水疱が出来ていた。

 熱いと感じる程では無かったけど、それなりに高温みたいね。

 反対の手で患部を撫でて治してしまう。


「これってどうなのかニャー?」

 ナオさんはゲームをしないから、今一どんな効果なのか分からないみたい。


「う~ん。そんなに派手なスキルじゃないけど、それなりに役に立つと思うよ。例えば爪だけじゃ効果の無い相手でも、火だったり風だったり別の効果を付ければそれが弱点だったりする事も有る訳だから」

 使い方に寄っては良いスキルだと思うわ。と答える。

 こういうのって、序盤で活躍するスキルなのよね。ゲームも終盤になると武器とかスキルとかの効果が飽和状態になって、序盤で覚えた地味なスキルとかの出番は無くなるんだけど……。


「うニャー。じゃあ今回はこれで良いって事にしておくニャー」

 取り敢えず多少なりとも強くなったと言えるから、ナオさんも満足してくれたみたい?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る