第40話 大工さん

「【木工】か~。当たりとは言えないけど、お薬とかよりはましなのかしら?」

 木製品とかDPダンジョンポイントで購入出来ると言えば出来るし、スキルが有っても材料と道具が無ければ何も出来ないし。

 とは言え、道具だけ購入すれば、材料は外に出て調達して来ても良いのかしら。DPだとワンポチで買えるけど、作るとなると安価で済むけど時間が掛かるっていう所なのかな。


「誰か【木工】を覚えたい子居るかな~?」

 スキルオーブを手に持って、取り敢えず他の子達に聞いてみる。

 と言っても、木工が出来そうな手を使えるのが私と白銀とフレイヤさんとコボルト達だけなのよね。

 白銀はスキルオーブは使えないらしい(ダンジョンのレベルが上がるとそれに伴ってスキルを覚えたりするらしい)のと、フレイヤさんはそれでなくても家事に大活躍している訳だから、これ以上仕事を振りたくない。

 後は私かコボルト達だけど、私も木工に専念する訳にもいかないし。何と言ってもサブマスターだからね。

 という事で、コボルト達の中から希望が出なければ、また仲間が増えた時にでも使おうと思っていたけれども、どうやら一人希望者が居た様です。


 毛足が短めで白ベースに茶色と黒の斑模様のある子が、きらきらした瞳で私を見上げているわ。

 大きな垂れ耳で、尻尾が真っ直ぐ上に向いていて、ビーグルに似ているのかな。


「あなたが覚えたいのかな?」

 横にしゃがんで確認してみれば、その子は「わふん!」と元気良く返事をした。


「じゃあ、はいどうぞ」

 差し出された両前肢の上に、スキルオーブを渡す。


 スキルオーブは魔力を通して、使用するって考えると使えるのよね。

 暫くするとスキルオーブを挟んでいた肉球に吸い込まれる様に、しゅわっと溶けて消えてしまったから、多分覚えるのに成功したんだと思う。


「スキル覚えたんなら、道具も欲しいわよね」

 木を伐り出してこないといけないし、基本的な道具がセットになっているのをDPで交換する。

 窯を作る時の左官セットはモルタルを塗るのに使うだけの最低限の道具だったけど、木工道具は広く浅く揃えたから50ポイントも掛かった。

 先行投資よ……。


「木を切ったりした時は、運ぶのは私がアイテムボックスに入れてするから、遠慮なく言ってね」

 ちびっこコボルト達には流石に無理だろうし。木工を覚えた子の頭を撫でながら言っておく。


「頑張って、お風呂に出来る様な大きな桶とか作ってくれると嬉しいわ」

 生活魔法の浄化で綺麗な状態を保てるとはいえ、温かいお湯に浸かるのはまた別物なのよ。


「まあ、良いですわね。私はパン窯をアーチ状に組み上げるのに木型が欲しいと思っていましたわ」

 お願いしても良いでしょうか? とフレイヤさんもコボルトの横にしゃがんで頼んでいる。


「わうっ!」

 木工道具を抱えたまま、コボルトは大きく頷いた。

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