第36話 これ知ってる、前に見た奴だ
「頑張ったね~。獲物を一人で獲れて偉かったぞ~」
傷よ治れと念じながら、岩トカゲを撫で撫でする。
何かこの子、他の子より小さいし喋り方もちょっと幼いから、子ども扱いしちゃうと言うか何となく心配なのよね。
ぽわぽわふわふわと光が発生して、岩トカゲが受けていた傷が綺麗に消えていく。
この回復だけは何度も発動させたから、力加減も思った通りに出来るようになったのだ。
柔らかい光が発生しては消え、最後に残った傷も消し去る。
よしよしと思いながら、仕上げに頭を撫でた時にパッと強い光を発した。
「えっ? う~んと、え~と、おおあご!」
それまで大人しく撫でられていた岩トカゲがいきなり叫んだと思ったら、私の目の前にシステムメッセージと共に半透明のウインドウが現れた。
『岩トカゲが美咲の【撫でる】によりネームドモンスターとなりました。名前は【おおあご】で宜しいですか? はい/いいえ』
みたいな奴。
「え、ちょっと待って……。おおあご? えー、それはどうかなあ……」
ネーミングセンスの微妙な私やナオさんが付けるのより酷い気がするんだけど、どうなんだろう?
本人が納得してるんだからそれで良い気もするんだけど。
「なんかつよそう!」
本人は何でも噛み砕ける強いモンスターになりたいそう。ううむ……。
「おおあごだとちょっと直接的過ぎるから、アギトとかどうかな?」
いやアギトも顎は顎なんだけど。ちょっとだけ十四歳的なあれっぽくてまだましな気がしない?
「アギトも強い顎っていう意味よ」
いや強いかどうかは知らないけど。
何かね、オオアゴって名前にしたら目の前の可愛い岩トカゲが、鰐みたいに進化して行きそうでちょっとね。
「アギト! かっこいい!」
どうやら新しい名前を受け入れてくれたのか、目の前の謎のウインドウのメッセージが『名前は【アギト】で宜しいですか? はい/いいえ』に変化した。
勿論『はい』で。
「【鑑定】」
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『アギト(ネームド)
レベル1 岩トカゲ
生まれたてなので可食部は少ないが 生まれたての為肉質は柔らかい 鳥肉に似ている
弱点は水 防御力の要となる岩の様な外皮が重い為 水に落ちると浮かび上がれない』
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無事アギトで収まった様です。
他のネームドモンスターになりたくて名前を用意していた子達より先にネームドモンスターになっちゃった訳だけど、何だろう、何かこの子ちっとも強くなったように見えないわ。
後で白銀に聞いて分かったんだけど、魔物のランクも一番下がEランクになっているけど、どうも更に下も居るらしい。と言っても弱くてもEランクに分類されちゃうんだけど。
そして岩トカゲは何と、一回進化して更にネームドになってやっとEランクの通常の魔物相当になったそうです。……どれだけ弱かったの……。
他の魔物を倒せずに外のエリアにいる虫と、激闘を繰り広げているぐらいだったみたいだからね……。
「ずるいニャー……」
名前が付いた、強くなったと手放しで喜ぶ岩トカゲを微笑ましい気持ちで見ていたら、ナオさんがそう呟いてジト目でこっちを見ていた。
手が届きそうで届かない位置でこっちを見ているのとか、近寄ろうとするとすっと遠ざかるのとか、これは本気のすねすねモードかしら?
「美咲の【撫でる】はナオさんの為のスキルなのニャー。他の子にばっかり使うのは駄目なのニャー」
許さないのニャーと良いながら、肉球でたしっと床を叩くの可愛過ぎやしませんか?
「はいっ! 全く持ってその通りです。私、美咲はナオさんの為に【撫でる】のスキルを使いますです!」
とは言えナオさんはすでに名前が付いちゃってるし、後は進化とかになるの?
いきなり化け物みたいな大きさになったりとかしたら、ちょっと嫌だなあ。
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