第35話 物語の終盤にならないと開けれない宝箱は許せない
そんな訳で、一層は入って直ぐに池が有って畑も有って、軽食も出してって感じで、冒険者達を滞在させる事を目的にした。
ダンジョンの中の良い所は意図しない雨が降らない所よね。
初心者向けのダンジョンは、町からびっくりする程離れている訳じゃ無いけど、だからといって町の直ぐ外に有る訳でも無い。
大体馬車で一時間ぐらいの所に出来るんだって。馬車は人の駆け足ぐらいの速度で、町の近くのダンジョンへと往復しているらしい。
なので、毎日通うにはちょっと面倒になるから、実力のある冒険者のパーティなんかだと、ダンジョン内部で寝泊まりしながらより深い階層を目指すんだとか。
まあ、そんな勝手に適当な場所で寝泊まりする人達はどうでも良いので、少しずつ行ったり来たりするような人向けに、入り口のこの辺りは分かりやすく安全地帯にしておこう。
柵なり石碑なり何だかそれっぽい物を置いて囲っておけば、冒険者達も安全地帯だと思う筈。それで一階に居る子達に襲わない様に言っておけば良いのよ。
後は、レイアウト変更で適当に生えている山査子の木を、角うさぎ達が隠れやすくて攻撃しやすい様に植え替えるとかかなあ。
白銀のプレートに地図を表示させて、更にそれを拡大して、移動させたい木を長押しからのドラッグで多分行ける筈。
まあ、私にはどう移動させたら良いか分からないから、親分にお願いして白銀と一緒に手直ししておいて貰えば良いかな。
一階はこんな感じかな~。とぐるりと見渡す。
特に可笑しい所は無い筈。段差とか諸々の陰になって見えないけど、部屋の反対の壁沿いにはダミーの出口も有る。実際の階段は別の場所に有るんだけど。
まあ、初見で引っ掛かって二度目からはっていう罠だけど。
初心者向けだし、こんなもんよ。程々に達成感が無ければ人は離れて行くしね。
後は宝箱も置きたいなあ。回復薬とかちょっとしたお金とか、大した物じゃなくて良いから。
再配置は
割と見付けやすいけど段差が有って遠回りしないと取れない場所とか、一旦引き返さないと取れない場所とかに置くのよ。
何て考えながら、白銀のプレートのメモ機能を使って思い付いたことを全部書き込んでいたら、目の端に何か動く物が映った。
「ん? あれは……」
「あ、さぶますたー! おひさしぶり~」
口を開いた途端に、何かがよたよたと口から逃れて飛んで行ってしまう。
「あっ……」
見るからにがっかりした様子で、岩トカゲが項垂れる。
「お久しぶり? ……かな~? 二日目には会ってたから、昨日会わなかっただけだけど」
白銀も何も言わなかったし、居る事を忘れていたとかそんな事は無いわよ。うん。
白銀曰く、お昼間は帰って来て、暗く成り掛けると出掛けて行っていたそう。特に大きな怪我もしていなかったし、一日一度は顔を出していたから、特別報告はしなかったんだって。
「それはそうと、あなた随分草臥れてるわね」
大きな怪我こそ無いものの、小さな傷はそこかしこに見受けられる。
「げきとうでした!」
ふんす! と得意そうに岩トカゲは、鼻息も荒く胸を張る。
夜になるとダンジョン外に出て、尻尾の発光器で光に寄って来る虫を捕獲していたんだそう。
進化して大きくなったとはいえ、所詮は手の平サイズ。魔物達の跋扈する外のエリアの虫は、彼には十分強敵だったようです。
「頑張ってたのね~」
そしてそのやっと捕まえた獲物を、さっき逃してしまったという訳です。暗い内に誘き寄せたのを、今まで掛かって何とかしたというのに。
「じゃあ、怪我を治して上げるからこっちにおいで」
回復スキルが有って良かったわと思いながら、岩トカゲを手招きした。
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岩トカゲの事を忘れていたなんて、ねえ……。
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