第33話 一層をメイキング
「このままだと二階まで一直線よね……」
範囲ギリギリまで広げた部屋を、丘陵に変更したから、多少の凹凸が出来たとはいえ、部屋の出口が丸見えである。
「と言っても初心者向けも向けの層だから、初見殺しとか嫌らしい罠とかは仕込まない方が良いのかな?」
ダンジョンの目的は魔素の循環だから、冒険者を頑張って呼び込まないといけない。
初心者がダンジョンに入った途端に心を折られたら、リピーターには成らないだろう。
「一本道でも良いから、段差を付けて直線で進めなくするかなあ」
ゲーム何かでも良くある手法だ。進めそうで進めない。
白銀に聞いて、段差設置を選択する。これはオブジェクト設置といって、50
段差と言うより崖を設置して、登れるようなスロープは部屋の端の方に設置する。次の段差を越えるスロープは反対の端へ。一辺一キロの部屋といえど、端から端へ移動させればかなりの距離を歩く事になるだろう。
勿論最後まで辿り着いたからといって、そこに二階への階段が有る訳では無い。
ホーソーンビー達の土中に作る巣のダミーを幾つか用意して、その中に階段を作ろう。階段が有る巣は、定期的に変更すれば良いし。
巣は花蜜豆に頼んでホーソーンビー達に掘って貰おう。部屋をそのまま設置すれば100P掛かるけど、用意した部屋を固定化するだけなら10Pで済むからね。
白銀から借りたプレートに今居る部屋の地図を投影して、それから段差設置を選択して指先でつつつっとなぞれば、目の前の空間になぞった通りに崖が出来上がる。
「ニャニャニャー! ナオさんもやってみたいニャー! ナオさんは池が良いニャー! お魚さんが居るともっと良いニャー!」
ぴょんっと肩に飛び乗って、ナオさんは興奮した様に前肢で私の腕を叩いた。
「池? ……どの辺りに設置すれば良いのかな?」
早く早くと急かされて、池設置を選んでから指先をプレートの上で彷徨わせる。
「ここニャ!」
たしーんとナオさんが横からプレートをタッチしたから、目の前に池が出現する。……何かちょっと足跡っぽい形をしている気がしないでも無いわね。うん。見なかった。
「お魚さんニャー。食べれるのが良いニャー」
とナオさんが主張するから、プレートを操作して召喚リストから食べられる魚で絞り込む。
「ナオさん、お魚さんは普通のと魔物とどっちが良~い?」
召喚した時に行き成り目の前に出現したら困るから、池の縁まで移動する。これで目の前に魚が召喚されても、無事に池の中にぼちゃんと行ける筈。
「ニャー、どうせなら狩り甲斐の有る方が良いニャー」
とナオさんが言うので、食用になりそうな魔物の魚の内でDPも程々で味も大きさも程々な奴を探す。
「ナオ様。ダンジョン内の魔物は、倒すと消えて後にアイテムを落とします。魚を食べたいのでしたら、普通魚を選ぶ事をお勧めします」
ところが、白銀から物言いが入って召喚を止める。
「ニャニャニャ。狩りは他でも出来るニャー。お魚さんは食べられる方が良いニャー」
ナオさんの主張に寄り、鱒を選んで召喚したら目の前に召喚陣が現れて、そこから一群れの鱒が池の中に落ちていった。
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