第21話 三度目の正直
三日目もやる事と言えば魔物狩りである。
冒険者に魔物を嗾けて魔素の吸収を目指す筈のダンジョン側なのに、どうしてこうなった……。
仕方が無い、先立つ物が無いんだもの。
何をやるにしても
こう、ダンジョンにどっしり構えているだけでDPが増える様な方法が有るなら良いけれど、そもそもダンジョンマスター(私はサブマスターだけど)が何が出来るのかすら手探りなので。
そうは言っても、生活するだけでもDPを消費してしまうのだ。
だから何か良い方法を思い付くまでは、ひたすら魔物狩りをするのである。
うん。これもう三度目だわ。
またも叩きのめした魔物が、もぞもぞと起き上がって身振り手振りで何かを伝え様としてくる。
何でこう、彼等は仲間になりたがるのか。
仕方が無いから頷いて、身振りで付いて来る様にと促す。
「【鑑定】」
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『コボルト
レベル5 コボルト
赤毛が美味いという噂があるが都市伝説 筋が多くて美味しくない 雑食なので臭みがある
弱点は雷 大きな音が苦手』
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と出る。
「おぉ!」
鑑定さんのレベルが上がった様です。遂に弱点が分かる様になった。
まあ、この周辺の獲物は弱点を突かなくても余裕で倒せる程度なんだけど。
私の横をとたとたと歩くコボルトは、背の高さが私の腰まで有るか無いかぐらい……つまり八十センチ程度。
歩くリズムに合わせて、尻尾がゆるく振られているのがとても和む。
この見た目が可愛いってのが、止めを刺せなかった原因な訳だけどね。
「ねえ、仲間になるのはあなただけで良いのかな?」
他にも一緒にダンジョンの眷属になりたいって子は居ない? と身振り手振りを交えつつ聞いてみる。
コボルトの子はちょっと首を傾げて考えてから、「わおーん」と一声鳴き声を上げた。
やり切った! と、得意そうに尻尾を振りながらこちらを見上げて来るから、偉い偉いと軽く褒めつつ頭を撫でておく。犬の後頭部も丸くて可愛いよね。
暫く待っていると、あちこちの茂みの中からコボルト達がやって来た。
コボルトと一纏めに呼んでいるけれど、犬種はバラバラなのね。
二足歩行をして武器を持っているけど、大体棍棒とか錆びた剣みたいな奴だし、これ絶対四つ足で牙で噛み付いて来た方が強いわよね。
「白銀~。眷属化お願い~」
ダンジョンに入って第一声がこうである。
三度目ともなるとこんなもんなのよ。
「了解しました。Eランクのコボルトが六匹ですね」
白銀さんも特に何も言わずにさくっと処理してくれる。
「さてと、見ての通りまだ何も無いダンジョンだから、当面の寝床とかは自分で何とかして貰わないとなの」
目線を合わせるためにしゃがみ込んで、最初に仲間になる意思を示したコボルトに話し掛ける。
「部屋が必要なら増設する事は出来るけど、あなた達はどうしたい?」
ホーソーンビー達は自分で巣穴を掘っているし、角うさぎ達は外から巣材を調達して来て部屋の隅っこに仮の寝床を作っているけれどと教える。
「わうわうわう」
ちょっと考えてからコボルトは答えた。
自分達は群れのリーダーと一緒に居たい習性があるから、どうか近くに寝床を作らせて欲しいとの事だった。
同じ部屋じゃなくても良いのならば、二階に私達の部屋があるからその近くに寝床を作っても良いと許可を出す。
「ダンジョンマスターは私じゃなくてナオさんなんだけど、大丈夫?」
目をキラキラさせて見上げて来るコボルトに確認を取ると、自分達のリーダーはあなたで、あなたのリーダーがナオさんならば、ナオさんに従うから問題無いとの事だった。
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