第18話 生活環境を早急に改善したい

 ダンジョンに戻って来たついでに、遅くなったけど昼食を食べる。

 と言ってもナオさんが猫缶と水だし、私もパンと水なんだけど。


「ホーソーン丘陵の水も、生活魔法の浄化を掛ければ安全では無いでしょうか?」

 【病気耐性】のスキルを得たとはいえ、病気になるような水を態々飲むのも気が進まなくて、ナオさんのために出した日本産天然水を分けて貰って飲んでいたら、白銀がそんな提案をして来る。


「それ、もっと早く聞きたかったわね」

 尤も、こっちの人は川の水程度じゃ中らないし、言わなきゃ分からないわよね……。


 仕方が無いから齧っているけど、出したパンは余り美味しくない。贅沢を言っていられるような状況じゃないけど、これもその内何とかしなきゃやる気とか精神的安定とかに影響が出そうだわ。飢えては死なないけど、飢えない方が良いって白銀が言ってたのも頷ける。

 ちょっと酸っぱくてかなり噛み応えの有るパンを小さく千切って、なるべく噛んで唾液を出してふやかしながら飲み下す。


「白銀、ちょっとメモを取らせて」

 と、半透明のプレートを借り受けてメモ機能を立ち上げる。

 欲しい物と題を入れて、台所、自分の部屋と書き込んでいく。

 何から手を付けたら良いのか分からない時は、こうやって優先順位とかそんな事は無視して並べ上げて可視化しておくのも大事なのだ。

 それはそうとして、自分の部屋は早急に欲しい。一日二日は我慢できても、個室じゃ無いと落ち着いて眠れないし、地面の上に直接寝るのも疲れが取れない気がするのだ。

 部屋で100P寝具セットも100P。……魔物二十匹分か。

 やるしかないわね……。

 稼げば稼ぐだけ余剰に回せるPも出来るというものだ。




 午後は、午前中に獲物を狩った続きの所から始める。

 丘の上……ダンジョンの入り口からスタートしたから、少しずつ下って行ってその分一回ぐるっと丘を回る距離が長くなる。

 午前中で分かったのだけど、この辺りはそれ程強い獲物は出ない。

 だから、一応鑑定を掛けてレベルを確認しつつナオさんとは別に私も狩りをしている。

 自分で使う分ぐらいは自分で稼ぎたいからね。

 途中で【格闘】スキルがレベル2になったら、それだけで大分戦闘時間が短くなった。


 て事なんだけど、何でまた私ボロボロになってるのかな……?

「【鑑定】」

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『角うさぎ(亜種)

レベル6 角うさぎ

本来は肉は柔らかく淡泊では有るが美味しい 

但しこの個体は肉が固いので煮込み料理などにすると良い』

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 別に鑑定さんのスキルレベルが上がった訳じゃ無いのに、必要の無い情報が増えている気がする。

 どこを目指しているんだろう……。


 目の前のうさぎは角うさぎというだけあって、頭の上に鹿の角の様な物が生えている。

 その角を前面に出してどーんと突進してくるのが戦法の様だ。

 いや尖っている角とかじゃなくて良かったんだけど。

 角が頭上に有るせいか、耳が垂れていて見た目だけなら結構可愛い。

 いや、目の前に居る子は目付きがめっちゃ悪いんだけどね。

 その上目の上にしゅっと傷が走っていて、もふもふなのにハードボイルドとか思ってしまって腹筋がちょっとやばかった。


「せいやっ」

 本当は突進してくるのに合わせてカウンター気味に蹴りを入れれば良いダメージが入ったんだろうけど、防具も付けていないゆるゆるの部屋着の足でカウンターを合わせたらこちらも痛い思いをしそうだったから、それは無しにした。

 向う脛を角で強打とか考えただけで震えが来るわ。

 防具……防具も早く欲しいけど、それよりも靴が欲しい。

 帰宅してご飯を食べて一息付いた所を呼び出されたから、足首まであるルームシューズを履いていて、素足よりはマシだけどって感じでしか無いのよね。

 グリーブとかそんなのが付いた革のブーツとかが多分良いんだろうけど、交換するのにどれだけ掛かるかに寄るわね。

 兎も角もルームシューズだから、角じゃなくて身体の部分に当たる様に、上から足を下ろして踏み抜いた。

 踏み抜いたって言っても、踏み潰す程の勇気が無くて……ちょっとグロ耐性はまだ取得していないからね……踏み付けるというか、踏んで押さえる感じになったんだけど。


 そしてあれよ。この光景午前中も見た気がするわ。

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