第16話 スキルレベル1の実力なんてこんなもんです

 レベル5になりました。

 ナオさんがばったばったと獲物を薙ぎ倒して、私が道に引っ張り出すという分業が確立しています。

 戦っているのはナオさんだけなんだけど、経験値は分配されているみたい。


 ナオさんばかりに戦わせるのはあれなので加勢しようかと思ったんだけど、ナオさんの動きが速過ぎてタイミングを計っている間に倒し終わっているというね……。

 まあ、ナオさんが大きな荷物を運ぶことは出来ないから、適材適所って事にしておいて欲しい。


 何て思っていたのに、戦闘中の現在について。


「【鑑定】」

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『ホーソーンクイーンビー

レベル6 ホーソーンビー

軽い毒が有る 通好みの味』

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「やっぱり使えな~い!」

 スキルは使えているけど、使えないスキルな事について!

 管理者マークを問い詰めたい!


 ナオさんが倒した獲物を引き摺って、道まで持って行っている途中で、どうやらこの目の前でお怒りの蜂の巣を踏み抜いちゃったみたいなのよね。

 土の中に穴を掘って巣を作るタイプの蜂みたいです。

 ひえって思った時にはもう遅かったという訳。

 足を挫かなかっただけ良かったと思うしかない。


 そんな訳で怒って突撃して来た女王蜂と戦っているのです。女王蜂がそんな前面に出て来て戦ってて良いのかとは思うけど。

 他の蜂が参戦しようとすると、ナオさんがシュパパって感じで倒してくれているんだけど、何故かその後は加勢してくれない。

 一人で頑張って倒せって事なのね……。


 相手は一応魔物なので結構大きい。

 結構大きいんだけど、所詮は初心者向けダンジョンのあるエリアの魔物だからそこまででも無い。

 つまり六十センチぐらい。他の働き蜂達は三十センチくらいだから、一応群れの中では大きいみたいなんだけど。

 それでも六十センチもある蜂が襲って来たら、普通はパニックですよ。冷静に戦えてるのは精神耐性的な物が付いたのかしら。


 それから、飛ぶ相手って凄くやり難い。

 どこからでも来れる訳だし。

 羽音が割と大きくて、何とか反応出来てるって感じ。

 気配察知的な物が欲しいけど、果たして気配察知のスキルにDPダンジョンポイントを回せる様になった頃もダンジョンマスターとサブマスターが戦っていないといけないのだろうかと思うと、結局取得しないで終わりそうな気もしないでもない。


「はっ!」

 お尻の先に有る針をこちらに向けて突っ込んで来るのを、右手で逸らして受け流す事で何とかやり過ごす。

 【格闘】なんてスキル持ってるけど、戦闘経験が有る訳でも無いし、何となく体捌きが無いよりはましってぐらいでしかないのと、攻撃が当たった時に無いよりはダメージが上乗せされている気がするって程度でしかない。

 そんな訳で初心者向けエリアの魔物相手にイイ勝負をしている訳です。

 可笑しいな、これスポ根物なの?

 ナオさん見てると無双系なんだけど。


 さっき針を避けた時に、針自体に触れてしまっていたみたいで、軽い毒のダメージを継続して受けているのを感じる。

 女王蜂に注意しながら、そっと自分自身を撫でて回復効果を発動する。

 それ程回復量が有る訳でも無いみたいだけど、詠唱せずに発動するのはこんな戦闘中だとかなり有利に働くみたい。

 戦闘能力的には多分向こうの方が上なんだけど、向こうがダメージがを蓄積させて行くのに対して、こっちは受けたダメージを少しずつ回復出来ている。

 長期戦になればどちらが有利かって事ですよ。

 いやでも、結構固いし飛んでて中々ダメージ入らないしで大変なんだけど。

 後、飛んでるから蹴りを入れられない。どうしても大振りになってしまうから、そうするとこちらが良い様に攻撃を貰う事になるので。


「ふぅぅぅ……」

 何度目かもう忘れたぐらいの手刀が女王蜂の関節の継ぎ目に入って、ぼとりと相手は地に落ちる。

 レベルが1違うだけで、こんなに大変な物なの?

 それとも私が雑魚過ぎるの?

 兎も角も止めを刺さなければと思って、用心しながら近付くと、まだ死んだ訳では無い女王蜂はもぞもぞと身動きをして身体を起こした。


 何か言いたそうに、こちらを見ている気がします。

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