第12話 冒険者のあれの事情
「あいたたたたた……」
目が覚めたら、超お腹が痛かった。
何これ、脂汗出る。
「ニャッ! 美咲大丈夫かニャ?」
痛みにお腹を抱えて呻いていたら、ナオさんが心配そうに顔を覗き込んで来た。
ちょっとお髭が擽ったい。癒される。お腹痛いけど。
「痛いぃ……。おトイレ入りたいぃ」
これお腹壊してる奴だ……。出先で一番困る奴。
「美咲、ダンジョン内はちょっとすれば吸収されてしまいますから、出して来ても大丈夫ですよ」
とか白銀が言ってくれるけど、そういう問題じゃ無い。
吸収されて消えるから良いってモンじゃ無いのだ。
「無理~。こんな何処に居ても皆から見える様な所じゃ無理~」
猫とダンジョンコアと蜥蜴だからセーフとかそんな事思える訳が無いじゃない。
「ニャーッ! 階層増やすニャーッ! 階層増やすニャーッ! 白銀早く増やすニャーッ!」
あいたたたっと、また呻いてお腹を抱えた私に、ナオさんがプチパニックを起こす。
「はいっ! 美咲、階層を増やしましたよ。これで皆からは見えない筈です」
動けないなら我々が移動しましょうか?
待ってと止める間も無く、ナオさんのパニックに引き摺られて白銀が階層を増やしてしまった。
いずれ増設するつもりで有っても、それは今じゃ無かったのに……。
これで残り280
「いや、無理~。吸収されるとか言われたら、更に無理~」
白銀に吸収しましたとか言われるとか、どんな羞恥プレイなのよ……。
乙女の尊厳が死ぬ……。
階層じゃ無くておトイレを作って貰ったら良かったんじゃ……と思うけど、後の祭りだわ。
「うう……、回復魔法とか効かないのかな……?」
自分のお腹を撫でてみるけど、腹痛は怪我じゃ無いからなのか、少しも痛みが引かなかった。
「回復魔法……。通常の回復魔法は取得に1000P必要になります。但し、病気などに効果のある魔法は、スキルレベルを上げないと使用できません。最初から病気に効果のある魔法が使える神聖魔法は、取得に5000P必要になる上に神聖魔法以外の魔法を覚えられなくなります」
と白銀が答えてくれる。
つまり、Pが絶望的に足りない。
「回復薬は……? 腹痛に効く奴……」
魔法とか有るなら魔法薬だって有る筈だ。そう思って白銀に聞いてみる。
「下級回復薬なら100Pなのですが、怪我にしか効きません。病気回復薬の下級の物は500P必要になります」
との事だった。
……さっき階層を増設していなければ。……いや、ナオさんの優しさだからそんな事は思うまい。
「あ~ん。楽器のマークの付いてるアレ的なお薬無いの~?」
尊厳か死か……。よもや召喚二日目でこんな事になろうとは……。
「日本産の薬なら100Pで該当しそうな物が有ります。購入しますか?」
「お願いっ!」
日本産の薬の方がPが低いのは、物価に対して日本の方がお薬が安いからだそうだ。異世界から取り寄せるコストを差し引いても、割安なのだとか。
食い気味で飛び付いて、出して貰った薬……何かちょっとパチ物臭い気がするけど、贅沢は言えない……を、ナオさん用に出した天然水で飲み下す。
昨日から口にしたのがホーソーン丘陵の水だけだったから、一応用心しておかないとね。
結果、三十分位したら痛みが引きました。
尊厳は守られた。
お薬凄い。でもあれ、絶対日本で売ってる奴じゃない気がする。
勿論ダンジョン日誌には文句を沢山書いたわ。
召喚するならこういった安全ぐらいは担保してくれなきゃ困るじゃない。
そしたら、
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『美咲ちゃんへ
こっちの水は未消毒だから、慣れて無いと中るかもね~。お大事に。
それから、おトイレの事だけど、お腹の中に向けて【生活魔法】の浄化を使えば良かったんじゃないかな?
普通に自分の身体に向けて使うと、外側の汚れが落ちるんだけど、お腹の中に向けて使えば中身が消えるよ。
冒険者とかで【生活魔法】覚えてる人はそうやってるみたい。
でもラッキーな事に、【病気耐性】を覚えたみたいだから、次からは大丈夫だね! やったー!』
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という返事が書かれていたんだけど、どうやって殴りに行こうかしら?
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