第3話 頭から爪先まで信用出来ない話
「勿論! 受けるか受けないかは、内容を聞いてから判断して貰って大丈夫!」
やっと本題に入れると、嬉しそうに言うけれども、そもそもの原因は相手の巫山戯た物言いのに有ると思う。
何処からともなくスクリーンと指示棒を取り出して、ついでとばかりに会議机とパイプ椅子まで用意して、さあさあ座った座ったと無理やり着席させられる。
曰く。この世界は創られてからそう間も無くて、ちょっとした事でバランスを崩しては滅びに向かうのだそうだ。
滅んでしまっても、また一から創り直せば済む話なのだけれど、つまりそれは自分の管理者としての能力不足だと言う事になるし、最初からバランスを取りながら創り直すのは案外面倒な作業らしい。
「じゃあどうすれば良いのかって事なんだけど、バランスが崩れるなら安定する様にしてやれば良いんだよね」
スクリーンに世界が壊れ生き物が死んでいく様を映し出しながら、管理者と名乗る相手は自明の理だと言う。
何がバランスを崩しているのか、それは魔素と言われる物の偏りなのだそうだ。
魔素が一所に留まってしまうのが駄目なのだとか。
集まった魔素が歪みを生み、生まれた歪みが魔物を生むとか何とか。何処かで聞いた事が有りそうな話である。
目の前の相手はどうにも信用出来ない感じがするから、崩れたバランスも無ければ偏った魔素も無いのかもしれない。
全てが嘘で、ただただ面白いから召喚したとか、そっちの方がまだ納得できる様な気がする。
それでも、召喚された事は事実で、自分に与えられた選択肢は管理者と名乗る相手の頼みごとを聞くか聞かないかだけなのだ。
「まあそんな訳で、バランスを取るために魔素を循環させる必要が有るんだ」
そしてその方法とは、言ってしまえばダンジョン運営なのだそうだ。
ダンジョンを整備するために
DPを貯めるために冒険者を呼び込んで魔物と戦わせる。
冒険者を呼び込むためにDPを消費してお宝を用意する。
そういった事全てが魔素の循環になるのだそうだ。
「なんでこの世界の人に任せないのよ」
わざわざ人を誘拐して来て、何を言っているのだろうか。
「それはもー試したんだなあ」
でも上手く行かなかったのだと言って、肩を竦めた。
最初パニックになって、そのままだったり。
どうしても魔物を使って人を襲わせる側というのが受け入れられなかったり。
そもそもダンジョン運営という物をどうしても理解してくれない。
それはそうだろう。人は自分の持っている常識の枠から飛び出す事は難しい。
「そんな訳で、そういう概念を持っている所から人を集めたって訳」
ちょっと強引なやり方だったけど。と悪びれずに言う。
これは多分殴っても許される。(二度目)
短時間でここまで何度もイラっとさせてくれる相手も珍しい。
「わー、待って待って」
拳をそっと握り込んだ辺りで、慌てて胸の前で手を振って遮って来る。
「それで、こっちの世界なんだけど、まだまだ出来てから間も無いから、文明レベルが君の住んで居た世界よりも遅れているんだよね。後、魔法やスキルに頼っているから、能力が無いと生き延びて行くのが結構大変です。魔物とかも出るから危ないし」
生活環境を整えるだけでも、難しいんじゃないかなあ。
ダンジョン運営をすれば、DPを使って便利なスキルを覚える事も出来るんだけど、お願いを断った場合そのまま当座の生活費程度を貰ってどこかで生活するって事になるけど、猫一匹養って行くのだって結構大変だよ。
親切そうな顔をしているけれど、
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