第4話……あっくん? なに、してるの? その女の子は、だれ?
※※※
そして今に至る。
土下座しつつ、ちらりと遥の方をうかがう。
トロン、と、焦点の合ってない目から、徐々に正気に戻っていく。
頬は赤いまま、遥は俺の方を困ったように見つめた後、己の身体をかき抱くように身を縮めて、何も言わず走り去っていった。
俺は罪悪感から、額を地面にこすりつけながら、三時間目の授業の終了を報せる予鈴が鳴るまでの時間を過ごした。
許すまじ俺。許すまじロリババア。俺をこんなカラダにした責任、必ず取らせてやる!
四時間目の数学がはじまるギリギリの時間に教室にすべりこみ、何食わぬ顔で授業を受ける。
昼休み。小野、原田と机をくっつけ、学食で買ったパンを食らう。
「おい月瀬、お前、遥ちゃんと何かあったろ? 三時間目の時遅れて教室入ってきたけど、顔真っ赤ですげぇそわそわしてたぞ。んでお前はサボり、と。ぐふふふ、まさかまさかまさか?」
小野はゲスい笑みを浮かべて俺と、離れたところにいる遥を交互に眺めている。
「ちちちちちげぇし。何もねーし!」
「かーらーの?」
「うぜぇ。しつこい」
「ロック。オレの目にも何かあったようにしか映らんぞ。話してみろ」
「決してエロいこととかしてないからっ!」
「あー、自分からエロいこととか言うの怪しいなあ!」
「ばっ、それはお前が朝そんなようなこと言ったからであって!」
「ロッキュー! いい加減吐きな!」
「まじ勘弁してください……俺と遥は本当にただの幼なじみなんです信じてください……」
泣き真似して懇願。俺の本気が伝わったのか小野と原田はシラけたように両手を頭の後ろに回した。
「つまんねー」
「つまらなくて結構。遥とは長い時間を過ごしすぎたせいでどうにも異性として見れなくてな」
チラッと遥の方をうかがう。
自分のグループで友人たちとお手製の弁当を食べながら談笑している。流石にもう落ち着いてるか。
唐突に、遥と目が合う。すぐにどちらからともなく気まずそうに目をそらす。
あー、これはマズいな。今まで遥と気まずくなることは度々あったけど、今回起こったこと、俺が起こしてしまったことはイレギュラー過ぎる。最悪、警察のお世話になることもあるかもしれない。なんとかしないと。
しかしこの日一日は遥と接触することができず、気まずいまま帰宅することになった。
「おお。帰ったな。我が眷属よ」
「月瀬明弘
つきせあきひろ
」
「ぬ?」
「俺の名前だ」
「そういうことか。よい名じゃ。お帰り、アキヒロよ」
「ただいま。あんたは俺の主らしいけど、敬語の方がいいか?」
「いんや。人間換算じゃとちょうど我の歳はぬしと同じくらいじゃからな。主従関係と言っても、我が術等で強制的にぬしを動かせるわけではないしのう。タメ口でよい」
「了解した。んで、早速言いたいことがあるんだが」
「なんじゃ? 言うてみい」
「吸血欲求抑えられなくてあやうく社会的に終わるところだったんだけど!? いやもしかしたらもうすぐ終わるかもしれない! どうにかならないのこれ!」
ソファでくつろいでいたロリババアに詰めより、肩をガクガク揺らしながらつばをまき散らす。
ロリババアは優雅にハンカチでご尊顔をふきふきしてから、澄まし顔で答えた。
「どうにもならんな。日が経つにつれおさまっていくことにはいくが、どうあがいても一週間に一度は吸血せねばならぬし、そもそも朝、我の体液を摂取したにも関わらず、日中、抑えきれなくなるほどの吸血欲求に駆られたとなると……ぬしはかなり性欲が、おっと、吸血欲求が強いようじゃな」
「ねぇ今看過できない言い間違いしたよね!? え、その欲求同士ってもしかしてリンクしてるの!?」
「だからまあ、諦めて吸血することじゃな。誰かおらんのか。異性のパートナーとか」
「スルーしないで! 吸血するしかないって、そんな。俺、彼女とかいないし。あ、そうだ、吸血って異性じゃないとダメなのか? 汗くさい男子どもには何も感じなかったけど」
「うむ。異性の体液でなければ栄養にならん。しかしぬしに異性のパートナーがいないとなると、当面は我の体液を与えるしかなかろうな」
俺の喉が思わずゴクリと鳴る。
このロリババア、いかんせん見た目は人間離れした超絶美少女なのだ。
「当面っていうか、ずっとあんたの体液をもらうことはできないのか?」
「馬鹿者。どの世界に一人立ちしない子どもがいるのじゃ。吸血鬼は自分で獲物を見つけてこそ一人前。面倒を見るのは最初だけじゃよ。というのは精神論的な話で、機能的な問題もある。吸血鬼の体液は栄養価が低いんじゃよ。味もいまいちなのじゃ」
「え? 俺はあんたのも十二分に美味しかったけど」
「それはぬしが節操なしなだけじゃ」
「その言葉のチョイス何なの!?」
「とにかく、吸血するなら人間相手が一番。だからぬしははよう異性のパートナーをみつけい」
「彼女作るより遥かに難易度が高い……!」
てか無理じゃね。どこの世界に体液飲ませてくれる女の子なんているんだよ。頭おかしいんじゃないか。
「精進せい。大丈夫。我の眷属ならきっとできる」
「あんたの眷属、ねぇ。そういえば、まだ、名前聞いてなかったな。俺のご主人様の名前はなんていうのかな?」
「む。そういえばまだ伝えておらなんだ。我は月読朔夜
つくよみさくや
。この名を魂に刻むが良い」
「呼び捨てで呼んでも?」
「我のかわいい眷属、アキヒロからなら何と呼ばれようとかまわん」
「よし。じゃあ早速。朔夜、晩ご飯は何作って欲しい?」
「カレー!」
「おおせのままに」
俺は朔夜の好みを聞き、中辛と甘口の中間くらいの辛さのカレーを提供した。大層無邪気な笑顔を浮かべられた我が主の御顔を眺めるだけで幸せな気分になる。
……て俺思いっきり眷属が板についてんじゃねぇかぁ!
違うだろ。問答無用で、俺をこんな身体にした恨みを晴らすべきだろ!
今日は色々あって疲れたから寝るけど、明日の朝、必ず不平不満をぶつけてやる。責任を取らせてやる。こんな体質になったせいで、どれほど苦しみ、恥をかいたか。分からせてやる。絶対にだ!
翌日。
「ご主人様のニーソおいしいよぉぉぉぉおおおお! はぁああんぺろぺろぺろぺろぺろりーん!」
「こらこら、がっつくでない。我は逃げたりせん。じっくり味わえ」
「ありがたき幸せ!」
「ふふ、かわいいやつめ。どれ、特別に直に舐めさせてやろう」
「誠にございますか!?」
興奮が止まらない。ニーソに染み込んだ分だけでもお腹一杯になれる自信があるのに、直にだなんて!
細い指が、黒いニーソのふちにかかり、ゆっくりと、俺を焦らすように下がっていく。
いや、ご主人様のあの目は、確実に焦らしにきている! めっちゃニヤニヤしてるもん!
「朔夜。限界が近い。早く。早く早く早く早く早くぅ!」
「そう言われると逆のことをしたくなるのぅ」
膝まで脱げたところで、さらに失速する。目が離せない。きっと俺の目は血走っているだろう。
「あ、ああああ」
ついに、おみ足が目の前に。
透き通るような白い脚。彫刻のように整った形。
しかし俺が興味を惹かれているのはそこじゃない。
蒸れて、湿り気を帯び、僅かに蒸気が出ている部分!
我慢できずに掴みにかかった俺を制するように、足裏が振り上げられ、俺の脳天に直撃する。
「待て、じゃ」
嗜虐的な笑みを浮かべながら俺の頭をぐりぐりする朔夜。なんだろう。段々気持ち良くなってきた。
「ッハッハッハッハ、クゥ~ン」
「おお、偉い偉い。きちんと待てができるなんて、賢い犬じゃのう。褒美に我の足を舐めさせてやろう」
「うっひょーい!」
満を持して、朔夜の足を口に含む。
親指から小指まで。一本一本丁寧に、よく味わって!
「あっ。そこは」
朔夜が色っぽい、小さな喘ぎ声を上げた。それは、俺が絶品スポットを見つけたのと同時だった。
指と指の間。そこには特に味の濃い汗が溜まっていて、俺を桃源郷へと連れて行く。
「じゅるるるるぅ、ぷはぁ。次っ! はふはふ」
「んんっ! や、やはりぬしの『舐め』は天下一品っ! こ、この我に、こんな快感を与えるなどっ!」
足裏。各指。指と指の間。
散々舐め尽くして腹八分目を超えたが、まだいける!
「次はふくらはぎ、ふとももだぁ!」
「……あっくん? なに、してるの? その女の子は、だれ?」
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