2、転生職業
「はい、これが今日のリストね」
山積みの本を載せられた机がミシリと音を立てる。
「えっと…これは?」
「今日のリスト」
館長のメティスは自慢のおさげを右に左に揺らしながら自分の執務室へと戻っていった。
その背中を見送ったあとに改めて俺二人分くらいの紙の束、いや山を見上げる。
すると一番上から紙がヒラヒラと舞い落ちたので目の前で掴む。
「『送られてくる魔道書と廃棄される魔道書、ついでに貸し出し期間過ぎても帰ってこない奴の居所リスト。 終わらせてね☆』……じゃねえだろ!」
思わず毒突いた言葉は静かな図書館に木霊し、利用者の何人かが身体をビクリと震わせてこちらに視線を向けた。
俺は確かに「本だらけの生活」と神様にお願いした。 しかし転生し、人生を歩んでいったその先に待っていたのは『図書館司書』というお仕事だった。
いやそうだ。 確かに本だらけの生活と頼んだし、事実、間違っちゃいない。 この世界で最も蔵書があるとされる『国立魔道図書館』に勤務しているから誰よりも本だらけの生活だ。
違うだろう?
おい神様そうじゃねえだろ? こっちは仕事しに転生したんじゃねーっての。 あと性別女にしてくれと頼んだのに反映されない。 おかげさまで男二週目の世界だくそ。
「しゃーねえ。 終わらせるか」
魔力を集中させ、右手でリストの山を人差し指で突っつく。 瞬間、紙の束はバラバラと舞い上がってどこかへ飛んでいく。
業務終了。
何をしたのかを簡単に説明すると積まれた紙の一枚一枚に魔力を込めて放っただけだ。 今日運ばれてくる魔道書は自動的に棚へと並び、廃棄される魔道書は処分室に集められて自動発火する。 本を返さない不届き者には俺なりの言葉を連ねて督促状を送りつけた。 そのシステムを一瞬で組み上げて流しただけだ。
短時間で組み上げる技量と知識で言えば俺は一流魔法使いと同等だとメーティスに言われた。 魔法に全てを捧げ、他を犠牲にしてようやく辿り着く極致であると言われた。
ぶっちゃけ興味ない。 俺の目的はただ一つ、早く終わらせて本を読む。 ただそれだけだ。
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