第65ターン 真のヒーローはもっと遅れてやって来る!?
そして――響き渡った
「…………えっっ……!?」
想定外の事態に、オルファリアの目が限界まで見開かれる。
(な……何が起きたのっ……!?)
困惑の中、オルファリアは起こった出来事を反芻する。……
「……ひ、酷い……!!」
思わず同情的な声がオルファリアの喉から滑り出る。
だが……
「きゃっ!! ……ぁ…………えっ……?」
反射的に目を閉じ、尻餅さえついたオルファリアだが――いつまで経っても何の衝撃も無いことに恐る恐る瞼を開く。彼女の鳶色の眼が目撃したのは……彼女自身へ殺到した
ディアスとロレンスも、考えもしなかった大逆転劇にポカンとしていた。
「……オ、オルファリアには、本当に打開策が……あったんだな……」
「……ま、まずいっ。安心したらどっと疲労と痛みが……」
緊張の糸が切れたようにぐったりとする二人に、しかしオルファリアの方も彼ら以上に唖然としていた。
(い、いえっ、これはわたしも完璧に想定の外の状況で! えっ? 何っ? 本当にどういうことなのっ!?)
オルファリアは怖々と
……何がどうなっているのか、全く以って解らない、そういう中――ヒステリックな悲鳴が古代の神殿にこだました。
「ああぁぁああああ――――!? 偉大なるアーネル様の
「――うるせぇ、黙れ」
「あぅぐっ!?」
声の方へ顔を向け、オルファリアはますます訳が解らなくなった。この神殿の入口を潜った辺り、そこでキンキンと耳障りな大声を上げたのは、オルファリアが数時間前の夕食で席を共にした
……そして、彼女に蹴りを打ち込んだ人物こそは――
「……ク……クラッドさんっっ!?」
「――ああ、そうだともよ。オマエの愛しいダーリン様だぜ? はっ、何てな」
朗々と声を上げ、不敵に唇の端を吊り上げるクラッド・イェーガー。……両腕と両脚を切り落としてやったと邪教の村の村長は勝ち誇っていたが……遺跡の石畳をしかと踏み締める左右の脚も、
それどころか傷らしい傷も負っていないクラッドに、オルファリアの混乱は極致に達しようとしていた。
(い、一体……どうなってるの~~~~~~~~~~っっ!?)
目を白黒させるオルファリアと同様に、ディアスとロレンスも目を白黒させるが、彼らの目には同時に強い怒りの炎も揺らめく。
「おまっ……クラッド! オルファリアの一大事に何処ほっつき歩いてやがった!?」
「彼女がどれだけ怖くて大変な目に遭ったか……!!」
「……あぁん? ……ああ。誰かと思えば、カダーウィンで見掛けた雑魚共じゃねぇか。何でオマエらがここに居るんだ? ……いや、状況から見て、この場の
「んぶっ!?」「うぎゃっ!?」「ぐはっ!?」
中年女性の
オルファリアの前に立ったクラッドは、膝を立てて座り込んだ姿勢の彼女へ、肩をすくめて感想を述べる。
「なかなか眼福な眺めだが、年頃の女の身の
「――ひゃっ、ひゃああああっ!?」
クラッドの忠告に、ようやく自分が全裸であったことを思い出したオルファリア。焦りつつもすぐ傍に落ちていた貫頭衣型の法衣を我が身へと押し当て、大事な所はひた隠す。
(で、でも、とっくに問答無用で見られちゃってたよぅ……)
ディアス、ロレンス、ピリポに続き、クラッドにまではしたない姿を見られ、オルファリアは炉にくべられた石炭のように熱を放出していた……。
そんなオルファリアの様子に余計に笑みを深くして、クラッドは楽しげに口にする。
「さぁて、そろそろ事件の解決編と行こうじゃねぇか――」
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