第48ターン 夜はまだまだ終わらない……

(もう……駄目! クラッドには全然、やめる気なんて無い! 駄目……駄目、駄目駄目駄目駄目ぇっ!! 助けて、ガス!!)

 ……けれど、真に愛しいガストムへ助けを求める『表』のメイリンに対し……『裏』の彼女メイリンの方は焼き切れるような情動に耽溺していた。

「あ、あ、あ、あ、は、は、は、は、んぁ、んあ、んあっ、んあぁっ……❤」

 ガストムにしか許していなかった、メイリンの決定的な最後の一線。まさしく、メイリンが「本当に愛しているのはガスだけ」と主張する為の、今や唯一無二となっていた拠り所。……それを、そこまでも、クラッドに蹂躙されようというのだ。その結果に伴う罪悪感や背徳感は、今日までの二年間でメイリンが胸の底で感じていた如何なる刺激よりも強烈で、鮮烈で、心地好いものとなるに決まっている。それを今さらお預けされるなど……実際は不倫に狂い、それによる罪悪感と背徳感が癖になっていて、クラッドとの関係の中毒者であるメイリンに……出来るはずがない。

「あぅあぅあぅあぅあぅあぅあぅあぅあぅあぅ、ぅあぅあぅあぅあぅあぅあぅあぅあぅあぅあ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っっっっ❤」

 クラッドを咥えて離さないメイリンから、本気の嬌声が止まらない。クラッドの掘削一往復ごとに新たな悦びを掘り当てられてしまい、メイリンは一段、また一段と、上の次元へと強引に押し上げられていく……。

「あっあっあっあっあっあっあっあっあっあっ、はんはんはんはんはんはんはんはんはんはんひゃぁぁああああああああああああああああああ~~~~~~~~~~~~~~っっっっ❤」

(ト……ぶ、トぶっ、何処までも……トんじゃうぅぅうううううう~~~~~~~~~~❤)

 メイリンがもう何も解らなくなり、意識が雲の上まで昇り詰めた――その瞬間だった。

 ……ビュグンッ! ビクビュグドクドビュドクドビュドクドビュクドクドクビュビュビュル~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッッッッ!!

「……ぁ……ぇ…………!? ぁ、ぁぁああああぃいやぁぁああああああああああああああああ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~っっっっ!!」

 メイリンは自身の内側で、クラッドから放出される音を聴いた。己以外の体温で温められた熱が、奥へ奥へと拡散するのを理解する。

 ……クラッドの側も、実は相当興奮していたのかもしれない。発射された量は、確実に本日一番であり……二年間の関係を通しても一、二を争うものであった。

「あっ……あぅっ……あぁ……ぅ……❤」

(あ、あぁ……駄目、無理、こんな……もしも、魔法が掛けられてなくても……絶対、絶対に……❤)

 メイリンは幻視する。自分のかけがえのない一個の細胞に、クラッドの因子が結び付いてしまうのを。メイリンの血統とクラッドの血脈が、メイリンの中に確かな根を張ってしまうのを……。

「あ――……❤」

 メイリンのカラダも、裏側の自分を押し殺し切れなかったメイリンの心も、人生二回目の女性の生物的本懐を遂げる機会の到来に、壮絶に打ち震えるのだった……。

 ――だが、クラッドはそんなメイリンとは異なり、まだ満足が足りなかったのである。

「ひぁっ……❤」

 今、きっと新生命誕生の真っ只中にあるはずのメイリンを、クラッドが淫猥に小突く。

「おらっ、オルファリアの為に、今夜中にオレを枯らすんだろ? まだまだだぜ、こっちは」

「ああ……そんな……❤」

 今なお余裕のクラッドに、メイリンの口を突いて出たその言葉は……終わりが見えない地獄への絶望感からだったのか、終わらないでいられる天国への歓喜からだったのか――きっと、彼女自身にも解らなかったに違いない……。

 泣き笑いの表情のメイリンの甘く哀しく蕩けた悲鳴が、カダーウィンの蒸し暑い夜の空気へ溶けていくのだった……。

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