第27ターン オルファリアの(パンツの)価値
……回転させ過ぎたのか、オルファリアの脳は明後日の方向の回答を叩き出していた……。
叫んでから正気に返ったオルファリアの首から上が、耳たぶまで灼熱色と化す。隣でティスが目を点にしていた。バオーの横の屈強な男二人も彼女と同じ顔をしている。オルファリアには見えないが、部屋の出入口横の男たちも同様であった。そして、バオーは――
「――っ……ぶふっ……! ……ちょ、ちょっとタンマ……!!」
口元を押さえて肩を震わせていた。爆笑を堪える彼に、顔面炎上中のオルファリアは目尻に涙を浮かべてプルプルと打ち震える……。
何とか笑いの波を乗り切ったバオーは、顔を上げると朗らかに結論を述べた。
「……OK! オルファリアちゃんのパンツにそこまでの価値があったら、望む情報を余さず教えるとも!!」
「え……えぇー? オ、オルファリアさん、大丈夫なの……!?」
オルファリアの下着にそこまでの価値があるのか? それ以前に、蒸気を噴きそうな顔色のオルファリアに、自らスカートをめくってその中身を晒すなど実行出来るのか……? 二重の意味でティスが心配そうな顔をする。
(……こ、ここまで来て、もう――後には引けないっっ……!!)
頭蓋骨の中身が煮え滾る感覚を味わいつつ、オルファリアはほぼヤケクソの心情で修道服のスカートを両手で摘んだ。
「……い……いきますっ……!!」
泣きそうな声で宣言し、オルファリアの両手が上へ動いた。脛に達するスカートの裾が持ち上がり、彼女の細く整った脚線が姿を現していく……。
「……へぇ……」
正面で鑑賞するバオーから感嘆の声が漏れた。白く可愛らしい膝小僧が覗き、瑞々しい色香を帯びる程度には肉付く太股がお目見えして――そこでスカートの上昇が一時止まる。しかし、
「……ぅ、おお……」
バオーの傍らの男の一人が呻く。幕が上がった舞台に立つ主演女優の如く――オルファリアのショーツが光を浴びた。柄は無く、刺繍やレースも無い。前面中央の一番上に、ごく小さな蝶結びのリボンが付いただけのシンプルな形状。色も無難極まりない白……。
――にもかかわらず、それには目を逸らせぬ存在感があった。視線がオルファリアの股間に貼り付くクロッチへ吸い寄せられる。
バオーの傍に傅くもう一人の男が、ゴクリと喉を鳴らした――
――《
「……くくっ……はぁっはっはっはっ!!」
――バオーの清々しい笑いが、熱く纏わり付く空気を吹き飛ばした。夢から覚めたように、男たちは一斉に闇ギルドの幹部を見る。
同時に、オルファリアも限界の様子でスカートを押さえた。熟し過ぎたトマトの如き顔色で、鳶色の瞳からは数滴の涙も零す。……いつからか漂っていた苺のような芳香も消え失せた。
(……わ、わたし、今……サキュバスの力まで使ってた……!)
男を魅了するフェロモン。緊張感と羞恥心に、汗と共に滲み出ていたとオルファリアも自覚する。――もっとも、今回はそれが功を奏した。
「OKOK、オルファリアちゃんの下着には充分な価値があったと認めよう。こいつらがここまでもの欲しそうな顔を晒したんだ、言い訳は出来ないね」
バオーの両横の男たちが面目なさそうな顔をする。オルファリアが後ろをチラリと見れば、部屋の出入口の所の二名の男は悔しそうな顔をしていた。
(……角度的にわたしの下着が見えなかったから……? ううぅ……)
即刻、全速力でこの部屋を脱出したい衝動がオルファリアを襲うが、肝心なことを聞かないままそれを行えば、完全にパンツを見せ損である。
「……あ、あの……それで……情報……」
蚊の鳴くような声で、オルファリアはバオーに情報提供を呼び掛けた。
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