第24ターン 闇ギルド
「……ボルドントめ。ともかく、まとまった金が要るのか、それも明日中に?」
「はい……」
再度確認したことでボルドントからの無理難題ぶりが圧し掛かり、オルファリアは頭を抱える。
「……結論を言えば、その借金を冒険者ギルドが肩代わりは出来ん。それをやってしまえば、公平性を保てなくなってしまうからな」
「それは……そうですよね……」
心苦しそうに告げるガストムに、オルファリアも同意した。冒険者は安定した職業とは言い難い。その仕事は他者から持ち込まれる厄介事で成り立っており、常にまとまった数の仕事が供給されているわけではないのだ。ギルドに所属する冒険者たちが総出で対処してもすぐには片付かない量の仕事が詰まっている場合もあれば、逆に全く仕事が無い状況で冒険者たちが暇を持て余す場合もあるのである。
そんな不安定な職業だからこそ、冒険者には借金を抱える者も少なくない。ただ、そういう金銭面のことはその冒険者の自己責任、冒険者ギルドは関知しないのが原則だ。冒険者ギルドは冒険者たちをまとめ、ある程度の支援はするが、甘やかす組織ではないのだから。
今回のオルファリアの件も、その例から漏れることは無い。ボルドントへの借金の返済は、オルファリアが自力で行わなければならないのだ。
「……だが、緊急で金が必要な冒険者に、優先して仕事を回すことくらいは問題無い。というより、それが冒険者ギルドとして出来る支援の限界ということだが……」
「それでも、今はありがたいですっ。何か、何かお仕事を――」
「……ですが支部長。明日中にこれだけの金銭を稼げる依頼は、今は無いのでは?」
オルファリアに申し訳なさそうにしつつも、メイリンがガストムへ現実を突き付ける。元はマリク、今はオルファリアが背負うボルドントへの借金は、手紙の配達では何百回やろうとも賄えない。ゴブリン退治でも不可能。それこそ……
しかし、そんな依頼は都合良く存在せず、そもそもオルファリアのような駆け出しの冒険者に任せられる仕事でもないのである。
「確かに、
「――ちょっ、支部長!?」
「……闇ギルド?」
焦った様子でガストムを睨み付けるメイリンに、オルファリアは首を傾げる。
「……俺もあまり勧めたくはないが、このままではボルドントの思う壺だ。その上で俺が提示出来る逆転の可能性はこれだけだ。それとも、他に案があるか、メイリン?」
「うぐっ……無い、ですけど……」
不本意そうに口を噤んだメイリンを見届け、ガストムはオルファリアへ説明する。
「闇ギルドは有体に言えば犯罪結社だ。
「……あ、あまりお近付きになりたくない印象ですけど……そこが、何か?」
「時に法も犯す、危険性も高い組織だからこそ、闇ギルドの仕事の報酬は冒険者ギルドよりも高額になる場合が多い。あそこなら明日中に君の目標金額を稼げる仕事もある……かもしれん。大きな声では言えんが、冒険者ギルドと闇ギルドは密接な関係にある。闇ギルドが伝える解錠や罠解除などの
言い終えたガストムの顔には苦渋の色があった。事前に彼自身が言った通り、本来あまり人に勧められる手段ではないのだろう……。
「あそこの幹部連中には俺も顔が利く。俺の名を出せば最悪囚われたり殺されたりすることは無いはずだ……が、最終的な判断は君次第だ。犯罪に手を染める可能性もあるからな……」
「……少し、ほんの少しだけ……考えます……」
気遣うように言うガストムに、オルファリアはそう絞り出すのが精一杯であった……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます