第18ターン 決意をもって、冒険者へ
カダーウィンは大陸の辺境で最も発展した都市である。
大陸の中央部から続く主街道はカダーウィンへと結ばれており、そこから辺境の町々、村々に枝分かれしていくのだ。
そんな交通の要所だからこそ、カダーウィンには辺境の全てが集まる。金銭も物品も情報も……厄介事さえも。
故に、彼らがこの街へ集まることもまた必然と言えた。
厄介事の解決を生業とする、冒険者たちが集まることは――
「――やっと着いた……。ここがカダーウィン……その『冒険者ギルド』……!」
背中の小さな鞄を背負い直し、オルファリアは堅牢そうな建物を見上げた。
コトネリアの死から半月。生家でもあった教会を後任の司祭へ引き継いだオルファリアは、母が冒険者時代に拠点としていたカダーウィンへようやく到着したのである。
(ここにお父さんの手掛かりがあるはず。もしかしたら、今もこの街に住んでるかも……?)
「……ううん、流石にそれは希望的観測が過ぎるよね……」
オルファリアは首を横に振り、そこまでの期待は打ち消した。コトネリアがカダーウィンに居たのはオルファリアを妊娠する前まで、一三年近く前である。それだけの時があれば、住人の入れ替わりは相当数に上るはずであった。
(それでも……お父さんもカダーウィンの冒険者だったのなら、この街で冒険者をやってれば何かしらの情報が摑める、かもしれない……)
そこに期待して、オルファリアはここまで来たのだった。
(……お父さんを捜し出してどうしたいのか……わたし自身にもよく解らないけど……)
今さら愛情が欲しいのか? 或いは恨み言を伝えたいのか? ただ、一つだけはっきりと形になっている気持ちが、オルファリアの中にはある――
(……お母さんが死んだことを、お父さんにはきちんと伝えたい……)
それが何になるのか、コトネリアの弔いの一環になるのかも、オルファリアには解らないが……娘として、母に、父に、そうしたいのである。
「……うんっ」
目的を再確認したオルファリアは、改めて眼前の建物を見据えた。木造だらけだった彼女の故郷とは異なり、精緻な透かし彫りが施された石材建築が多いカダーウィンの街並み。その中でも特に重厚な建築物である。まるで小規模の砦のようだ。
こここそが冒険者ギルド……正確にはその『カダーウィン支部』。
冒険者となるのに特別な資格は必要無いが、なりたい者が勝手にそう名乗り、無断で仕事を受けていては混沌としてしまう。それを予防する為、冒険者たち、そして彼らに行ってもらう仕事を管理するべく発足された組織――それが冒険者ギルドである。
国家の枠を超えた超大規模組織であるそれの、カダーウィンにおける支部が、オルファリアの前の建物というわけだ。
オルファリアは、ここで冒険者になる旨を伝え、登録してもらわなければならない……。
「……お、お邪魔します……」
見た目は重そうな、だが作りが良いのか意外に軽い扉を潜り、冒険者ギルド・カダーウィン支部へとオルファリアは足を踏み入れる――
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