第15ターン 真サキュバス降臨

 許容量を遥かに超える刺激で気を遣っていたオルファリアが、ぼんやりとながら意識を取り戻したのは――数秒後だったかもしれないし、数時間後だったのかもしれない。

「…………はぅ…………?」

 仰向けのオルファリアの全身には、鎖のように重い疲労感が絡んでいた。手足ばかりか翼と尻尾も洞窟の地面からまともに持ち上がらない。それでも彼女は、自身の汗と、マンティコアの唾液と……その他の体液にも塗れた我が身を起こそうとする――

「……あぅ……?」

 ――四苦八苦するオルファリアの上体が、何者かに助け起こされた。振り返った彼女の目に飛び込んできたのは……マンティコア。忠犬のようなお座り姿勢がシュールである。

 その瞳の中には――オルファリアの下腹部の紋様と同じ形をした光が浮かんでいた。

「……〈淫魔の恋人ラヴ・スレイブ〉……」

 オルファリアが呟いたその名称は、サキュバスに完全に魅了され、身も心もその虜となった者たちを示すもの。オルファリアの蜜を……彼女のサキュバスとしてのフェロモンがこの上なく溶け込んだ体液を貪れるだけ貪ったマンティコアがそうなってしまったのは、必然だった。

 この老爺の顔を持つ赤獅子の魔獣は、最早オルファリアに絶対服従。彼女が「死になさい」と命じれば、喜んでその命を差し出すだろう……。

 そんなマンティコアに、オルファリアが最初に下した命令は――

「――動かないで下さい」

 ……そのままの姿勢での待機、であった。それから、オルファリアは這うようにして完全にマンティコアへと向き直る。その視線が射抜くのは……。

「……はぁぁっ……凄い、です……❤」

 ――マンティコアのだった。

 全裸の、あられもない姿のオルファリアを前に、彼女の虜となったマンティコアが平常心であれるわけがなく……赤獅子の股間からは、体毛よりも赤々と焼けた剛直が天に向かって佇立していた。太さも長さも人間マンカインドの男性の比ではない……成人男性の前腕ほどのモノを思い浮かべて頂きたい。

 それを、オルファリアの今なおとろんと潤んだ瞳は、うっとりと眺めていた。

「おっきい……! でも、ちょっと可愛いかも……❤ 触っていいですか? 触りますね♪」

 マンティコアの返事を待たず、オルファリアの白く繊細な指が彼の魔獣の方に伸びた。元よりオルファリアに逆らえないマンティコアは甘んじてそれを受け入れ……ビクン、ビクンッ。

「あはっ♪ 凄く熱くて、硬いですね。ドクドク脈打って……臭いも刺激的で、素敵……❤」

 お気に入りの玩具おもちゃを前にした幼児のように目を輝かせ、マンティコアのアレをツンツンするオルファリア。その顔には、マンティコアが冒険仲間を傷付けた仇であるという怒りも、自身にあれだけのことをやらかした相手であるという憎しみも、欠片も認められない。

 ……まるで、オルファリア自身もマンティコアに魅了されてしまったように……。

 それは、ある意味ではハズレではなく――

「――ふふっ…………❤」

 オルファリアの珊瑚色の唇を、その隙間から忍び出た真っ赤な舌がチロリと舐める。

 マンティコアから受けたご無体な所業で尽き果てたオルファリアには、盛り、精魂アニマが滾っている眼前の魔獣は、回復にはうってつけのご馳走の山に見えていた。

 サキュバスの本能がオルファリアに囁く。「目の前のマンティコアを喰らえ」と。「飢えを、渇きを、その精で満たせ」と――

 自分史上最高の天国イキを体感したオルファリアは、その本能を容易く受け入れてしまっていた。一〇代の僧侶クレリックの乙女とは思えぬ淫靡な笑みを浮かべ、マンティコアへにじり寄る……。

「ねぇ……わたしの、ア・ソ・コ・☆ 美味しかったですか? 溢れ出したお汁♪ あんなに一生懸命啜ってましたもんね……❤」

 オルファリアが身を屈め、上目遣いにマンティコアへ問い掛けた。滑らかな頬で、老け顔の魔獣の亀の頭の如き一部分へ頬ずりする。

「で・も・☆ あなたばっかりわたしのお汁でお腹いっぱいになるなんて……ずるいですよ? わ・た・し・も・♪ でお腹いっぱいになりたいです……❤」

 普段なら絶対しないはずのおねだりをしつつ、オルファリアが舌でマンティコアの肉の杭を撫でる。舌先でその輪郭をチロチロと嬲った。

「っ……ぅんっ……舌……火傷しそうなほど、熱い……です。むせそうなくらい臭くてっ……味も……凄いっ、です……! でも……でもっ……わたしっ、これっ……嫌いじゃ、ないっ、ですよ……!! むしろ…………好きっ……大好きっ、かも……です……❤」

 情熱的な言葉を紡ぎ、マンティコアのアレなソレを唾液でベトベトにしていくオルファリア。照り光る凶暴な肉塊に心奪われた表情になって……彼女は満を持した風に首をもたげた。

「そ・れ・じ・ゃ・あ・☆ ――頂きますね♪ ……ちゅっ❤」

 マンティコアのの先端……敏感なそこに、「わたしがされたことのお返しです☆」とばかりに、オルファリアの蠱惑的な接吻が為された。

 それが、マンティコアの限界だったのだろう。根元から頂点に向かって痙攣を走らせた魔獣のムスコさんは、火山の如く噴火する。

「――んんっ!? んぐっ、ん、んっ……ぅんっ、うぅんっ……こくっ……こくんっ……ちゅっ、ちゅぅっ……こくんっ……こくんっ………………けほっ……ぷはぁっ……❤」

 オルファリアは、噴出した溶岩のようなモノの半分近くを顔面に浴びながら、残る半分を口内へと吸い込み、嚥下したのであった――

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る