第13話 悪く思ってくれるなよ
「グンホー本社への道のり」
『100メートル先、右方向です』
自治官から奪ったスマホのSariに道を訪ねつつ、柴犬の変装で堂々と大通りをいく。
道中、『柴犬を認識する能力』をつど、自治官から奪っていけば、書かれる必要がない事に気がついたのだ。まさに天才の発想である。
いきなり狙撃でもされたら敵わないが、相手型も不審というだけでいきなり射殺してきたりはしないだろうと、ある種この街の秩序を信用しての行動だ。
「本社についたらとりあえず、命令をだした人物まで辿って、この不可解な指名手配を解除させる」
「ですね。何もしてないのに撃たれるなんて、いくらアキラさんが残酷な剥奪者だからって、可哀想ですものね」
スズには悪いが、俺には逮捕される心当たりがあるのでここはスルー。何もしてないのに、という部分には否定も肯定もしない。
ただ、まぁ、詐欺容疑がかかっている訳もなく、さらに
⌛︎⌛︎⌛︎
しばらく
「スズ、見ろ。グンホーの社員が出てくるだろう? 彼らのうちからアプリ開発に必要な能力をスズに移植することで、お前は人類最高のアプリ開発技術をひとりで保持することになる。複数の才能が組み合わさることで、新たに見えてくる境地もあるだろう」
「なむなむ。グンホーさんたちすみません。私の出世のためには仕方ないんです、なむなむ」
さして謝意を感じない合掌を了解の意とし、俺は眼鏡をかけたいかにもエンジニアな輩たちへ視線をむける。
今宵の勤労を終えた彼らには申し訳ないが、これが大競走時代の弱肉強食なのだ。
悪く思ってくれるなよ。
⌛︎⌛︎⌛︎
「……ミスター。あの男のリーク通り、異世界の大英雄が、この千代田の街に紛れ込んだようだ」
暗い部屋。意図して光量のしぼられた最上階。
繁栄を一望できる眺めのいいペントハウスのテラスで、星空のした、バスローブ姿の男はプールサイドでグラスをかたむける。
「異世界、まだ見ぬ宝が眠る場所、ほかの誰も辿りついていない市場。もうひとつの火星ーー」
グラスのなかの高級ワインを弄び、唇をとがらせて男は静かな声でならべていく。
「ーーあぁ、なんと素晴らしい。手付かずの地下油田を掘り当てたとでもと言うのか。うん、いいだろう、やろう。ネイティブアメリカンを追い詰めるとしようじゃないか。大英雄、と言ったか? 彼には、あいつらよりも早く、我が社を開拓地へ案内して貰わなくては」
男は不敵に笑い、グラスをかたわらの子机においた。
腰掛けの手元、映しだされる立体的半透明のコンソールで操作して、
可動チェア起こすと、彼は着こなしていたバスローブを脱ぎさり、すぐ横のプールの中へと浸かっていく。
「大英雄、重課金アギトを殺さずに連れてきたまえ、
「了解だ、ミスター」
主人の声にこたえ、高層のテラスからひとつの影が街へと舞い降りた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます