【第二幕】 太陽が目指した遥か

「おい冬也! そっちに上がるんじゃない!」

 県内のクラブで争われジュニアサッカーの選手権の準々決勝。1-2となってしまったFCカムイは、後半アディショナルタイム、最後のプレーとなるだろうタイミングでディフェンダーの背番号4が相手のペナルティエリアの中央部辺りへ勢いよく走る。

 右サイドに流れた味方が相手を振り切り、こちらを見てクロスを上げる。必死に飛び込む背番号4。相手ディフェンスが邪魔しにきたがお構いなしだ。とにかくボールに、なんとか一点をとらなくては。

「あ」

 誰の声だったのかは分からない。が、それが聞こえた時にはもう自分の体は、衝撃とともにボールとは離れていた。ぶつかってしまったのだ、誰かと。ピッチ外に流れるボール。倒れる少年と、ぶつかった誰か。痛みの中見えた同じ色のゼッケンを着てる事に気づく――ああ味方同士で接触したんだな、着地ミスった倒れ方されたな――揺らぐ視界に、倒れた味方の足が嫌な方向を向いてるように見える。視界の歪みのせいなのか、本当に曲がっているのかは分からない。

「え、え、ちょっとやばくない!? 兄ちゃーん! こっちー! 倒れたよー!」

「おい冬也! 下向くな! こっち見ろこっち! 息出来なくなるぞ!」

「う……」

 騒然とするピッチ内。同時に乾いたホイッスルの音と、駆け寄るチームメイトの姿が見えた直後――意識が飛んだ。

 相手のゴール裏で観戦してた少女と、目が合ったのを最後に。

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