第22話「小さなif」

「静流、この服、似合うかな?」

 私は服を着てみると、静流に向かって見せてみる。目が治って初めて静流が私に選んだ服だ。似合っているといいのだけど。

「うんうん、凄く似合ってるよ。お姫様みたい」

 静流は子供のようにはしゃいで私を褒め殺す。そんなに褒められると、流石に恥ずかしくなってしまうのだが。

「お姫さまって、そんなにフリフリの服を着てるわけじゃないんだから。もっと上手く表現してよ」

 と、口では文句をこぼすが、静流の言葉は何だって嬉しかった。私の事をよく見たくれるようになって、それだけでなくこんなに積極的に私を着飾ろうとしてくれるなんて。今までの苦悩の清算をしているようで、幸せな気分になる。

「だって、今までよりこのことを見られなかったんだもん。だからきれいな格好、一杯見せてちょうだい」

 まったく、私よりも静流のほうがきれいでかわいい、なんて言ったら静流は照れるだろうか。それとも、恥ずかしがる? 前に鏡を見せたときは、感慨深そうに自分の顔を見て終わりだったが、どう思ってるんだろう。

「静流の方が、何よりもきれいだよ」

 試しにそう言ってみる。すると、顔を真っ赤にして、黙り込んでしまった。あらら、そんなに嬉しかっただろうか。

「これからもっと、二人の思い出を増やそうね」


 そんな話を、たまに夢に見るのだ。

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