第17話「私だけのアイドル」
「いやー、お疲れ様。今日はこれでお仕事終了。落ち着いたら帰るよ」
ある番組の控え室。時間は夜の11時半。私は、スタジオでの収録を終えた担当のアイドル達のケアを始める。既にメイク道具や衣装、小道具などを片付け、後は皆の帰宅準備ができるのを待つだけだ。
私の担当するアイドルは3人ユニットで、つい最近売れ始めてきた新星といったところだ。今まではよく眠れていた時間も、予定が入って削れてしまうとボヤく子もいたが、仕事が入るのはいい事だ。
「マネちゃん、この後ちょっと空いてる?」
撤収準備も終え、皆で控え室を出ようとした所でアイドルの一人、結城夏葉が私を呼び止める。何か相談事だろうか。休日の申請だとか、売り出し方とか?
「いいよ。2人だけの方がいいよね。今日はここで解散だし、皆は先に帰ってね」
夏葉以外の人達を先に返し二人で道を歩く。中々言い出しにくい話なのか、夏葉は何も言わずに隣を歩いている。
「何か、悩み事でもあった?」
私が気を利かせて聞き出そうと動くと、夏葉は慌ててあたふたし、少しすると深呼吸して私の方を向く。
「マネちゃんさ、結構可愛いよね。あたし達顔負けでさ。うん、なんて言うか、さ」
しかし、話し始めてもそんな感じで中々ハッキリとしない。夏葉はもっとハッキリと言う所が売りなのだが、実際はそうなのだろうか。いや、確か素だったはずなのだが。
「あたしにとっては、マネちゃんが1番の推しだから! そ、それだけ。お疲れ!」
夏葉は勢い任せにその場で畳み掛け、走って帰っていった。って……え?
一方私はその場で硬直し、首を傾げることしか出来なかった。
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