第4話「あの日、蝶に出会った」

「いやー、すみません、慣れてなくて」

「他のやつはもう慣れてるんだよ。もう勘弁してくれないかな、蝶野さん」

 就職してから2、いや3ヶ月か、それ位の頃だった。私は仕事に慣れ、そこそこの手際で成果も上げ始めた頃、未だに要領が悪く叱られてばかりの人もいた。蝶野あげは、彼女はいつまで経っても仕事を覚えず、怒られ続けてそれを見るのにも慣れてしまうほどだ。それに、私の隣でもあるのが少し厄介である。

「椿さん助けて。全然分からないんだけど」

 私は何かの度にこうやって泣きつかれてはお世話をしているのだ。そろそろ私の方も教えるのに疲れてきたのだが、一向に覚える気配はない。

「それにしても、なんでそんなに出来ないの?」

 昼休憩の時間、私は思いきってあげはに聞いてみる。嫌味というか、悪意の感じられる聞き方しか出来なかったが、あげはは私にそのような他意がない事を理解してくれたようで、少し考えながら答えてくれる。

「やりたいことだったら、出来るんだけどね。それ以外はてんでダメみたいなんだ」

 苦笑しながら語る言葉は、やっぱり呆れてしまうそれで、しかしながら、気になる返事でもあった。

「やりたいこと、あるの?」

 私の言葉に、あげはは満面の笑みで答えた。

「あるよ。絶対叶えたい、子供の頃からの夢」

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