第15話「聖園と穢れの少女②」

「Dear:シエラ」

「私の神様はシエラなんだ」

「突然でごめんね」

「シエラは誰よりも清純で、純白でさ」

「オマケに容姿も人一倍綺麗なんだ」

「するりと指が通る髪も、その肌も、透き通るように明るくて、結晶か何かだと思うよ」

「その上なんだ、私みたいな罰当たりにも等しく接してくれるじゃないか」

「清純故に私みたいなのを拒むなんてのはよくあるけど、シエラは怒るだけで、拒まない」

「本当に、嬉しい」

「だから、シエラなんだ」

「そう、シエラはなんで自分が私の標的なのか分からなかったね。そういう事なんだ」

「私は、何よりもまっさらで綺麗なシエラの事が、神と見紛うほど好きなんだ」

「急に言われても困るよね」

「そもそも、それこそシエラからしたら私への愛情は神に対しての浮気になる」

「でも、よく考えて欲しいな」

「目の前にいる人を想う方が、いるのかも分からない誰かを思い続けるよりよっぽど、報われるんじゃないかって」

「うん、ごめん。流石に今のはシエラへの冒涜だった。でも、私はそう説きたいほどに好き」

「祈りを捧げる姿が好き」

「祈りを捧げる声が好き」

「瞳を閉じたその顔が好き」

「話す時に浮かべる笑顔も好き」

「身を清める時の水に濡れた髪や身体が好き」

「そういった全てがとても愛おしい」

「だから、私は浮気をさせてでも、シエラを振り向かせたい」

「from:マリナ」


 その手紙は、あまりにも愚直で、冒涜的で、度し難いものだったが、しかし。

「そんなにまっすぐ伝えられたら困りますよ」

 私の心は、そんな手紙に揺さぶられていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る