第14話「聖園と穢れの少女①」

「アーメン」

 私達は、教会で育てられた聖女見習い。清く正しく美しく、悪を知らず、善を信じる。

「シエラ、愛故に恋せず。愛故に交わらず。なんて、寂しすぎると思うの」

 私が1人、神に祈りを捧げていると、彼女は今日も私の邪魔をする。全く、なんて、愚かな考えをするのか。

「ミリナ、愛は神に捧げるもので、人への恋は浮気です。全く、そんな話はやめてください」

 私が頬を膨らませて叱ると、ミリナはため息をついて私の前に立つ。イタズラ好きなミリナは、いつもこうして私にちょっかいを出すのだ。全く、どうして私なんだろう。

「神って、そもそも各々の信じ方でしょ。私は神に対して浮気はしてないよ」

 それは、どういう事だろう? 愛だ恋だと宣う以上、彼女は好きな人でもいるはずだと思っていたのだけど、言うだけの人なのだろうか。いまいち言うことが分からない。

「あの、私の事をからかいたいだけでしたら、やめてくれませんか。困ります」

 私がムスッとして言うが、それが余計に彼女の悪戯心を刺激するようで、ニコニコと笑みを浮かべる。

「だけじゃないんだって。まあ、私は浮気しないけど、シエラはするんだけどね」

 シエラがするのか……私が? 人一倍熱心にしている自覚さえあるのに、まさか私が色恋沙汰に巻き込まれるなんて、そんなことは。

「私、絶対シエラを振り向かせるから」

 ミリナは今日も、適当を抜かすのだった。と、軽く流したかったのに。

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