第2話「アウトサイダーエンカウント……あげは×一美」

「やっほ、久しぶり。まだウリやってんの」

 特に予定も入っていない土曜日、私は手持ち無沙汰に街を歩くと、平野あげはに出会った。興味ありげに聞く姿にため息をつく。

 よりによって、昔の顧客に会うなんて、今日はツイてなさすぎる。私達は営業以外は全く干渉してはいけないという取り決めをしていたはずだが。

「何していようが勝手じゃないですか。貴方だって、ちゃんと働けているんですか」

 私が高校生だった頃から確か成人しているという話だったが、同時に定まった職にもつけていないと嘆いていた事もある。私も今これを定まった職というのは少し気が引けるが、稼げているからセーフだろう。

「まあ、ぼちぼちかな」

 どこか遠くを見てそう誤魔化す姿を見るに、今も変わっていないのだろう。

 全く、私達はどうしてもまともな道は歩めないのか。そもそも公的な商売でない私と援交をするような人が、まともなわけが無いか。

「それで、また付き合いたいんですか」

 このまま話すのもなんなので、とりあえずと思い聞いてみる。そもそも援交だけの相手に久しいからって声をかけるだろうか? むしろ私なら避ける。思い出すのも嫌になる事の方が多いし、愛のない偽物の愛を思い出して何になるのか。

「いや、全然。私には恋人が居るからね! まあ、多分一美のおかげだよ」

 まさかの惚気だった。ふざけるな、私にはその想いが分からないのに。

 そんな怨みを募らせながら、何も言わずに振り切ってやった。

 私だって、恋も愛も知ってやる。

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