第2話「その手は是か非か」
「澪さん、少しいい?」
12時を回った頃、私も昼休みに移ろうかと考え始める頃、裕美が私のデスクまで来て呼びつける。普段は社内メールで呼び出して落ち合うのに、どういう風の吹き回しだろうか。
「何か不具合とかありましたか」
できる限りの平静を装って聞くと、そういう訳では無いのだけど、と前置きし、私を連れ出そうと手招きする。
「何かあったんですか。わざわざ直接のお呼びなんて、業務中は不干渉でしょう」
言い訳によっては今後の関係にも差し障る重要な行動だ。その目を見据え反応を伺う。
「澪ちゃんは社食頼りだからね。たまにはお弁当はいかが?」
誰も通っていない通路をいい事にちゃん付けしながら話し、弁当を差し出す。先輩の手作り弁当のようだが、まさか私のために?
「何か期待してます?」
立ち止まってジト目を向ける。すると図星だったようで、裕美は目を逸らして何も言わない。
「まあ、ありがたくいただきますけど、助かります。私料理出来ませんし」
私がありがたく受け取ると、裕美は唖然とする。期待外れのような、そんな表情を浮かべている。なるほど、作った分返しに作って欲しいということだろうか。
「残念でしたね。そう上手く事は運びませんよ。でも、本当にありがとうございます」
その日の昼は、裕美の期待通りに行かず、私の一人勝ちで終わった。
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