火曜日「上司×部下百合」

第1話「ヒミツの関係」

 職場の昼休憩の時間。私は休憩室でも食堂でもなく、旧資料室に来ていた。上司の裕美に呼び出され、ここに落ち合うのだ。

「澪ちゃん、会いたかった。長期休暇中はどうしても会えないから、我慢ばっかりだったよ」

 抱きつきながら甘えるような声でそう言う裕美は、私達の勤める部署で一番の営業成績を収める敏腕上司。なのだが、私と二人きりの時だけは、こうして甘えて私と触れ合う事を求める。

「あんまりベタベタしすぎると誰かにバレますって。社内恋愛禁止って分かってますか」

 私は、こんな関係を深く意識したことは無い。ただ、会社ではダメなことをしていて、さらに同性で、挙句私からの愛もない。これ程酷い交際も無いなと、漠然と思っているだけだ。

「分かってる。恋愛じゃないでしょ。私達の間に愛はない、ただの慰め合いだからね」

 『合い』なんて付くほど相互作用があるだろうか。私は、慰められているだろうか。

「同性関係なんて誰も疑わないですしね」

 私達は、ここで落ち合う度に、そうやって大丈夫だと自分たちに言い聞かせているのだ。言い聞かせて、乱れて。私達は、惰性の関係を続けている。

「そうね……大好きよ、澪ちゃん」

 これは、部下の私と上司の裕美、恋愛とも違う、ヒミツの関係。

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