第4話 極悪3


 ひとりでに動き出した歩く枯れ木たちが暴れて混乱している外壁の防護の合間を抜けて都市に侵入する。

 外壁の防護は中々のものだったから内部もさぞ防備が固められているのだろうと思ったら、外壁の内側では通常の生活が送られていた。

 大砲やら魔法やらが飛び交っているのに心配じゃないのだろうか?

 どうやらこの都市にいる住民は大部平和ボケしているようだ。

 しかし、平和ボケしてるといっても目の前に脅威が現れたら流石に逃げる。

 そう思っていたが、周囲の住民は全然逃げていかない。

 全然びびっていないのか?もしかして全員鬼のように強いのか?

 そんな疑問が噴出していたが、目の前の女が腰を抜かして失禁しているのを見て間違えだったと気づく。

 ああ、ただ恐怖しすぎて動けなかったのか。

(にしても恐怖し過ぎだろ)

 動かないことをいいことに女に無造作に近より触れて生気を奪い取る。

 すると住民たちは恐怖に悲鳴を上げてたちどころに逃げ去っていく。

 追いかけて生気は吸いたい、しかし一人ずつしか生気を吸えないのならあの逃げていった住民のうちどれだけの数を逃がすことになるのだろうか。

 そう考えていると体の中に貯めこんだ生気が反応した。

 生気を消耗して体から無数の黒い触手が発生して逃げていった住民を追いかけて捕まえ、そして生気を吸いとる。

 そしてその生気を更に使って触手は枝分かれし、周囲の住民から生気を吸い上げた。

 そして生気を吸い付くすと触手は元に戻るように体の中に入っていった。

 満腹だ。

 まだ食べられないことはないがわざわざ食べることもないだろう。


 しかし同胞はいないのだろうか?やはり人間の町ではなく同じ種族の町を探すべきか……?

 しかし自分の種族が群れをつくるとも考えがたい。まだあまりわからないがこの様子なら一人でも生活していけるだろう。ならば群れる必要もないのではないか。


 少しの時間考えて、この都市に住み着くことに決めた。

 迷子の鉄則はその場から動かないことだ。ならば動かないことで探してもらうことにしよう。とりあえずはそう決めたのだ。

 そう決めたのはいいがこの都市は些か汚すぎる。

 赤、青、黄、緑等々様々な色で塗りたくられた不恰好な家々はあまりにも汚い。

 近くの建物の壁に手を当てて、力を使う。

(石になれ。石になれ。石になれ。)

 そうイメージすると触れた場所から灰色の石に変化していき、地面を伝わり萎びて倒れた人間を巻き込んで

 石化していく。

 しばらくすると都市から生命はなくなり、無機物だけの美しい世界に変わった。

 造形はダメだが、一番の問題の色はなんとかなったからよしとした。

 あとは居心地のよさそうな一番大きい建物に向かい足を運んだ。


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