第3話 極悪2


 村を出て地図を頼りに都市に向かう。大体は道なりに進んで人の気配を辿ればなんとかなるだろうから地図は保険だ。

 地図上ではかなりの距離に感じたが、歩いてみるとそうでもなく体感的には2時間もかからずに都市が見えてきた。

 相変わらずこの国の建物はセンスが悪く色の統一性が無い。

 そのことが不愉快だが、ここまで大きい都市なら同胞が一人くらいいるだろう。

 いないにしてもその情報くらいは。

 どうせ穏便に事を済ませることはできないのだ、ならば正面から堂々と行こう。

 そうした方が同胞もこっちの存在に気がつきやすいだろう。


「ψφθЕДТПЙЛТ!!」

 ある程度の距離になると都市の外壁の上から人がわらわらと弓やを構えてこちらに何かを言っている。

 わざわざ拡声器のようなものを使ってもらったところ何なのだが、俺には意志疎通のツールがボディランゲージしかない。

 それにこの姿でまともに人間と意志疎通できるとも思っていない。

 俺の姿は三メートルから四メートルの長身で人形だが口や耳などの器官は一切なく、輪郭がぼやけて見える。

 というのもおそらく俺のからだは光をほぼすべて吸収しているのだ。

 だからそもそも自分でもよくわからない。

 もしかしたらそれらの器官があるのかもしれないが、どうあがいても見えないなら無いのと同じだ。


 距離が三百メートル程に近づいたあたりで爆発音と共に大きな鉄の塊が飛んできた。

(ああ、大砲とかはもうあるのか.....)

 次々と爆発音がなり大砲の球が、矢が、魔法が飛んでくる。

 自分の中の魔法の力、魔力に集中する。

(壁。壁。壁。)

 すると魔力が意思に反応して地面から次々と枯れた黒い木を生やす。

 枯れ木なんかで防げるのかと思ったが思ったよりも頑丈なようで全て防ぎきる。

 相変わらず思ったとのと違う魔法だが、前回のように生気を吸ったりしないのかと思って眺めていると、地面から色が失われていき美しい灰色になる。

 対照的に枯れ木には生命力が与えられ、前と同じように黒い萎びた果実がなる。

 そんなのイメージしていないのだが、なぜ俺の魔法はみんな同じような結末を迎えるのだろうか。

 しかし今回の魔法はそれだけではなく、なんと枯れ木は地面から根を引きずり出して歩き始めた。

 最初は呆然と眺めていたが、攻撃が枯れ木に集中しているのを見てさっさと入ろうと思い、都市に侵入した。

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