第2話 極悪1
花畑を抜けだし、人の気配のする方に歩いていくと村があった。
そういえばナチュラルに能力を使いこなしているがこれはなんか使えたから仕方ない。
思えばあの花畑に来たときから異様に耳もよかったし、直接見てないのに男の動きが事細かにわかったりしていたからそういうものだろう。
人を殺しても何の忌避感もなく、それは当然のことなのだということも理解できた。
そして力の使い方もある程度は。
それを検証するために今村に来たのだ。
別に人の村じゃなくてもいいのだが、この近辺には他にまともな生物がいないのだ。
ただの獣だったり粘体生物だったりと纏まった数がいなく、すぐに逃げてしまったり検証のしようがなかったりとデメリットが大きいのだ。
その点人間はメリットの塊だ。
集団で行動していて逃げるのも遅くて恐らくだが悪魔と相性がいい。
それに腹も満たされる。
目視で村が確認できるくらいまでに近づくと村のなかから武器を持った男たちが出てくる。
どれも小粒だが、防具をしっかりと着込んでいる戦士は少し強いようだ。
そして男だらけの中に一人だけ女がいる。
女と言っても老婆なのだが、その老婆からは何か力を感じる。他の男たちとは違う力だ。
老婆が何か小声で喋ると突如として老婆の目の前に樹木が現れ、その樹木が槍のように俺に殺到してきた。
これは魔法なのだろうか?思ったよりもこの世界の人間は個人的な力を持っているのだろうか。
だが、相性が悪い。
まだあまり検証はしてないが俺の能力は生物に滅法強い。
地面に触れただけで周辺の植物が枯れるほどには生物に強い。
(だから恐らくこの樹木も触れるだけで......)
手を伸ばし魔法で産み出された樹木に触れると、触れた端から樹木が崩れ去っていった。
しかし、あんなに勢いよく成長していたにも関わらず、生気はほとんど吸いとることができなかった。
近づこうと一歩踏み出そうとすると地面から木が生えてきて足を拘束しようとしてきた。
しかし、足に触れるとそこから枯れてしまい、何の抵抗もなく一歩を踏み出した。
老婆たちはその様子に驚いた様子で、何か言い合っている。
あっさりと距離を詰め、老婆に触れるとただでさえ枯れ枝のようだった老婆は一瞬で萎びていき塵となった。
魔法の力を多くもっていたから生気も多くあると思ったが別物のようだ。
男たちが槍やら鍬やらで攻撃してくるが全く効いてこない。
試してみたいことができて男たちの方を見ると、男たちは恐怖に顔を歪ませ、一目散に逃げようとする。
そして背中を見せた男たちに手のひらを向けて自分の中にもある魔法の力に集中する。
さっき老婆が見せたあの樹木の槍の魔法、俺にもできる気がする。
生憎老婆が何と唱えたのかもわからないし、何より発声器官がこのからだにはないのであるかもわからない脳内でイメージする。
地面から樹木。地面から樹木。地面から樹木。
すると体の中の魔法の力が反応し、男たちの真下の地面から枯れた樹木が槍のように生えてきて男たちを串刺しにした。
そして枯れ木は男たちの生気を吸って黒い萎びた果実を一つつけて地面に落とした。
その果実が何かをするわけでもなかったので一つ拾ってみる。
食べようと思ったが発声器官が無いように者を食べるための口が無い。
生気を吸いとろうとしても何も吸いとることができない。
そこで興味が失せて果実を投げ捨てた。
村に入ると案の定もぬけの殻で、生物といったら家畜くらいしかいなかった。
この村はそこら中に生えている花からアロマオイルを作っているようだ。
村を物色していると地図のようなものを見つけた。
そしてその地図には大きな都市の場所が示されていた。
近くにあった方位磁石と地図を手にもち、大きな都市に向けて歩きだした。
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