橋、作りてぇ
橋、作りてぇ(1)
「はーい、みんなー! ここに集まってくださーい! 館長先生からおはなしをお聞きしますよー!」
校外学習だろうか。十数人の子どもを引き連れた一団が小さな祠の前に集まってきた。引率しているのは眼鏡をかけた20代前半と思われる女の子と恰幅の良いおじいちゃん。
「
「そんな、せっかく館長先生が解説してくださるんだから、聞かなきゃ損ですよ」
博物館の歴史講座のようだ。館長先生と呼ばれたおじいちゃん、街の歴史研究家の名誉職といった感じか。
「じゃあこの猫額山温泉郷に伝わる大事な大事な昔話をするからね。聞きたい人だけでいいから集まって。みんな好きに遊んでていいよ。ああ、遠くに行っちゃいけないよ、あそこの木から先に行っちゃダメ」
どうやらエスケープする常習犯がいるらしい。あらかじめ釘を刺すのは当然だろう。館長は首にかけたタオルで汗を拭くと静かに語り始めた。
「昔からこの町は温泉街として栄えていました。そこに一人の物乞いが住んでいました。物乞いってわかるかな?何か事情があって普通に働けなくて、みんなから少しずつお金をもらって生活していた人だよ。この人はね、人当たりがよくて街の名物だったんだ」
子どもたちから「聞いたことある」「おばあちゃんから聞いた」と声があったが、館長は「コホン」とひとつ咳払いをし、にっこり笑って話を続けた。
「そして名物といえばもう一人、怪力の大男がいてね、乱暴者だったからみんなから嫌われていたよ。二人とも身寄りが無かった。それなのに大男は何かにつけては物乞いの男に意地悪をしていたんだ…………」
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