付喪還し コトノワ

于羅観

プロローグ

「はぁ…はぁ…はぁ…」

 やせ細った青年が苦しそうに息をしている。今にも倒れそうだ。周りには奇妙な化け物が4・5体、引きちぎられたりつぶされたりして倒れている。青年の体がぐらりと揺らいだ。

「おい、雷電らいでん、大丈夫か!」

 逞しい男が青年を抱きとめた。

「おい、たまき。雷電そろそろ限界だ」

「わかってますよ、延寿えんじゅ

 環と呼ばれた男が答えた。細身で背が高く知的な感じだ。どこか遠くに日本人離れした雰囲気を持っている。

「陽子が見つけてくれた例のもの、取りに行きましょう」

「そうだな。よし、じゃあまずここを片付けようか」

 延寿と呼ばれた逞しい男が、懐から小さな道具を取り出した。柄の長い小さなハンマーのようなものだった。環はポケットから指輪を取り出した。

「さあいくぞ!セイッ!」

 延寿が近くの化け物をハンマーで叩くと、ボウっと青い炎を上げて消えた。

 環は指輪を宙にはじくと、その指輪めがけて指を突き出した。

「バイラ」

 環がつぶやいた瞬間指輪は光始め、環の指が貫くように入っていった。数匹の化け物を燃やし、その炎を吸い込んでいく。二人であっという間に化け物たちを消滅させた。

「よーし、きれいに片付いた。何の痕跡も残ってないな」と言ったものの延寿はすっきりしない顔をしている。

「延寿、気が付きましたか?」

「お前もか」延寿は環の方に向き直った。「お前なら気が付いているとは思っていたけどな」

「なんというか、いつもと違って、大きいんですよね。サイズじゃなくて、この受け取る感覚が。何か裏があるような予感がしてたまらないですね」

「そうだな。とにかく急ごう。おい、雷電、立てるか? おお、よし、俺につかまれ。行くぞ」

 三人は歩き出した。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る