第4話

「模倣」






 毎日のように闇サイトを覗いては同士の存在に嬉しさと、やはり自分は異常なのだと確信してしまった虚しさに揺れ動く中、それを見付けた。




 それは動物の死体のホルマリン漬けだった。




 だが死んでるようには見えないような生き生きとしたポージングで漬けられたそれは、動物の命を消費していながらも美しかった。

 もはやそれは芸術作品と言ってもよい出来栄えで私の中に衝撃が走った。こんなものがあったのか、と感動して思わず投稿者にコメントを送った。






 闇サイトは見るだけならギリギリ安全なのだが、さらに投稿、コメントを送ると闇サイトに警察の検閲が入った時に足がつきやすくなる。しかしそれを上回る作品への想いと興味で感想を迸らせた。








 その日の夜、京子は興奮と送ってしまって良かったのかという少しの後悔から目が冴え、眠れなかった。






 翌日作者から返信が来た。彼(彼女かもしれないが、なんとなく彼の方がしっくりくる)からコメントへの感謝とホルマリン漬けの趣味を理解してもらえた嬉しさが綴られていた。

 京子はそのままコメントのやり取りを続けて、彼の作品のファンとして応援していることを示そうと思った。そうすると、彼の方でも京子のことを信頼し始めてくれたのか、段々と本心を教えてくれるようになった。








 彼は、ギリギリ犯罪にならないように研究目的という肩書きでホルマリン漬けを製作しているが、本当は人間の体でホルマリン漬けを作りたいこと。しかし人間の体で作るにはもはや犯罪になりそこまでの勇気はないこと。人間の体の美しさを、ホルマリン漬けに閉じ込めたら益々美しくなるだろうと毎日妄想してしまうこと。

 今では警察にバレないように足の付かないメールアカウントでのやり取りで、そう告げられた。








 ああ。


 なんて素晴らしいのだろう。








 京子は2度目の衝撃を覚えた。


 これこそが私のやりたいことだ。そう直感が告げていた。

 あの冬の日に見た同級生の生足をホルマリンに漬け込むことで、10代の瑞々しい足を美しいままに閉じ込める。京子はその妄想だけで興奮してしまい、鼻血を垂らしてしまう。そして例え何を犠牲にしても必ず現実にしてみせる。そう京子は決意した。

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