第1話 星屑組参上! 1

 メディコ・ナイムは今年九歳になるならずの少女だった。正確な年齢は本人も知らない。五歳になったばかりの頃に両親と別れて王都に働きに出され、名高い富豪のもとで、細々とした、だが厳しくつらい仕事をこなす日々を送ってきた。


 とくに自分の運命に疑いを覚えたこともなく、特別両親を恨んだりしたこともなかった。この時代、働きに出される子供の存在は別段珍しいものでもなかったし、家族と別れて暮らすことに関して、この世の終わりのように悲しむような風潮もそれほど強くはなかった。彼女の毎日はつらいことの連続だったが、全く希望の光が見えないというわけでもなかった。


 今年の初めからは、運良く富豪の一人娘の世話をする役目につくことができ、メディコの短い人生の基準に照らしてみれば、素晴らしく希望に満ちた日々が始まったように感じられたのだった。素直で、ひたむきに一生懸命働くメディコの姿と、よく泣きよく笑う素直な性格は富豪の娘にたちまち気に入られ、一週間も経たないうちに二人の娘は姉妹のように仲良くなった。


 ところが、ある日突然なんの前触れもなく、生まれて初めてメディコの人生に疑問を生じさせた事件が起こった。素性の知れない黒い男達が、富豪の屋敷の最奥部、一人娘の部屋に音もなく忍び込み、瞬く間に娘と、娘の世話をしている下女達をさらっていった。泣き叫ぶ娘達の悲鳴が屋敷の誰の耳にも届かず、何の効果も持たなかった裏には、何か魔法的な力が働いていたのかもしれない。メディコは幼い頭脳でおぼろげにそう考えていた。


 ともかく、メディコは富豪の大切なひとり娘とともに、自分が黒い賊の一派に誘拐されたことを自覚していた。自分がもうすぐ死ぬかもしれないことを考えると、恐ろしくて涙が止まらなかったが、彼女はむしろ、優しい富豪の娘に不幸が訪れた事に心を痛めていた。


 さらわれた最初の夜、娘達は薄暗く、狭く汚く異臭のする部屋にひとまとめにしてとらわれていたが、次の日にまず富豪の娘が引っ張り出され、どこか他の場所へ移された。他の娘達も次々に最初の狭い部屋から姿を消した。やがてメディコはひとりぼっちになり、ひどい孤独感と戦わされる羽目になった。数日間の間、メディコは自分の身と、富豪の娘の身を案じながら過ごした。


 「神様、どうかお嬢様をお救いください」


 部屋の高い天井寄りの唯一の窓から覗く星空に向かって、メディコは祈っていた。鉄格子のはまった小さな窓からは月あかりが差し込み、わらが散らばっている小さな部屋の、石の床を照らしていた。

 最初に祈ったときはただのつぶやきだったメディコの祈りは、日が経つにつれて、いつの間にか独り言にしては大きすぎる声に変わっていた。


 「それと、できたら、私たちも一緒に助けてください」


 「いいよ。助けてあげる」


 「えっ?」

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