第6話 光の方へ

いつも思うことがある自分は、人生の

ブービー賞で一等賞はもちろん取れない。

席替えも好きな子の隣にはなったことがないし、表彰状も受け取ったことがない。

主役には程遠い、脇役にもなれない。

電車で座ろうとした席におじさんかおばさんが目の前で駆け込んでくる。そんな女です。

好きな人には好きな人がいるなんてことも。


空港の搭乗口でパスポート写真の髪の毛が

長かった頃の私を眺めて、これまでの人生を振り返った。


でも、もうそんなことはよくなった。

「自分は自分の生き方をしよう」

って決めた。

「同棲、結婚、妊娠全部やめることにした」

と決意のメッセージを友人に送った。

友人の返信は「正解」だった。


「放棄することにした」

でもこの放棄は夏休みの宿題を終わらすことを諦めたのでも、会社に行くのを辞めたの

とも違う放棄。


「女の子なんだから」「女の子らしく」

そんな呪縛やしがらみから自分を解放して

あげる。

みんなが望む幸せは、みんなから望まれる

幸せは、私の幸せではない。

幸せの隙間からこぼれ落ちないようにするのは苦しいね。

だからここで一生続くサイクルを私は放棄

する。


25歳の時くらいから急に歳を取るのが怖くなる。

結婚式に呼ばれる回数が徐々に多くなり、

みんなが世間一般で言う幸せを手にする。

私は結婚を幸せやゴールだと思わないし、

「おめでとう」とも思わず同情の意を込めてご祝儀を払う。


人は人と暮らすことができないと私は思っている。


もちろん幸せが、いいのだけれど幸せを追い求めると「もっともっと」と欲を出すから、幸せになろうとするから辛くなる。

幸せとは何も追い求めないことなのかもね。


だから私はできるだけ光の方を目指すことにした。


行き先はデンマーク。

もう帰らない。小さな家を買って犬を飼う

のが私の今の望むことかも。

さようなら、日本の私。

さようなら、スカートを履くことが嫌だった高校生の私。

さようなら桜新町の定食屋さん。

それでは行ってきます。 


口実はデザインの勉強に。

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