第4話 あまり行かない喫茶店で

「何故、アイツがモテるのか?」

と本心から湧き出てくる疑問と少し嫉妬心が混ざった表情で奈緒子は問われた。

「んー彼には不思議な雰囲気が溢れているのよ」


彼は確かに不思議な雰囲気を持っていた。

話上手な訳ではなく口数も少なく聞き上手な彼との時間は女の人にとっては居心地がいいのかもしれない。

それでいて愛嬌があり男女問わずに可愛がられるタイプだ。


「ふうん」男は拗ねるような形でテーブルでうなだれた。

納得のいかない様子で

「アイツは今どこで何をしているの?」

奈緒子も質問をきっかけに気になった-----------



女の人から言われた言葉や教えてもらった

音楽を今でも覚えている。

近所の喫茶店で同級生の奈緒子とPCでレポートを打ち込んでいた。

もちろんコピぺで埋め尽くされたレポートである。

「あとレポート何個ある?」

「んーあと1500字程度」

そうだ。奈緒子は昔からコツコツ勉強を頑張るタイプだった。

「奏ちゃんは?」

「後2つ。というかお前そのソウちゃんってのやめてくれない?そろそろ恥ずかしいだろ?」

「ごめんごめん。私の中で奏ちゃんは奏ちゃんなの」

小学校から奈緒子のことが好きだった。

中学の時に通学路だったこの喫茶店の前で

一度告白しフラれてから、もう告白する勇気もなくなり、ただの友達になってしまった。

それでも、何故か奈緒子はその後も一緒に

いてくれた。


「これが終わったら手伝ってあげるからもう少し頑張りなさい。あ、コロッケ奢ってね」

奈緒子との学力に差はなく2人とも難なくある程度の大学へ入学し、めでたく小中高大と

同じ学校になる。


「大学生ってもっと華やかでキラキラした

毎日で合コンとかサークルの飲み会じゃないの?」


注文したアイス珈琲を飲み切り、既に氷が溶けてしまい残った水だけをストローで吸い込み続けた。

「これじゃあバイト、レポート、試験に追われて、華やかな大学生活があっという間に終わっちゃうよ」

奈緒子は無視をしながらキーボードを叩いた。


そんな事を言いながら夏休みに海へ行って

日に焼けた肉体を見せびらかし、燥ぐ性格でもないし、お酒が飲めないし、第一に大学

生活を満喫している人間とどうもテンションが合わない。

あの中に自分がいると思うと恥ずかしくて

仕方がない。


静かで涼しい喫茶店や、図書館、美術館が好きだ。

大人数よりも1人が好きだ。

ナンパ目当てで、クラブに行って大音量の中、声を張り上げて喋るよりかは、喧騒な

街中をイヤフォンで耳を塞ぎ流れてくる音楽を聴くだけで自分が世界の主人公になったかのように闊歩できた。

大嫌いな夏も夏の音楽を聴いた時だけは夏が好きになれた。


そんな自分を理解しているから奈緒子は無視をした。


今思えば、彼らのこと少し羨ましかったの

かもしれない。


大学に入学してから初めての夏休みを迎えようとしていた。

数十分後、作業を終えた奈緒子が「ふぅー」と息を吐き両手を突き上げ背筋を伸ばした。

その後の言葉をはっきりと覚えてる。

「私と2人でいる喫茶店も華やかな大学生活

なのよ?奏ちゃんは心配しなくても大丈夫。

きっとこれからいい女性がたくさん現れるよ」


その時は不思議に思ったが、奈緒子のこの

言葉から女の人との関わりが広がり深くなる。


「あと、珈琲飲んでお腹痛いんでしょう?」

と奈緒子に飲めない珈琲のことを見透かされていた。

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