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イリヤは、自然に二人に溶け込み、穏やかな日々を過ごしている
AIがエラーを出す事は無くなったが、どれだけ調べてみても何故三年先に登場するはずだった人間が、ここにいる事になったのかは分からないままだった
二人は、エラーの理由とAIが早期にイリヤを教師にした理由に思い当たる事がなかったが、対象の二人が互いに特別な感情を抱いているとAIが気づいての事だった
イリヤは、感情面で二人が成熟した頃に送られる存在であり、彼が与える愛情を二人がどう受け取るかで世界が変化していくはずだった
だが、閉鎖された世界で歪な成長を遂げてきた二人にとって、世界は二人きりのものであり、その世界を侵されることを嫌う傾向がある
それをAIは情緒面の成長と判断し、彼女たちに互いに抱いている感情を理解させようとイリヤを選別したのだ
彼は感情の機微を感じ取り最適なコミュニケーションを選択することが出来る、知的生命体である。人間と同一視されないのは、その頭蓋の一部にAIが入り込んでいるからであって、成長型のAIを抱いている彼ではあったが思考の一部を支配されているだけであり、感情面においては僅かに自我を残している
イリヤが抱いている感情もまた、AIにとっては選択の対象であり、自身の依存する存在を優先してしまったのは、必然だったのかもしれない
イリヤは二人を見たとき、柚依を好ましく思っていた
柔らかく微笑む姿も、髪をそっと耳にかける仕草も、目が離せなくなってしまい、言葉に詰まる
戸惑うイリヤを気遣う優しさに触れると、どうしようもなく胸の奥がざわついてくるのだ
いつしかイリヤは、二人の正面で話していたはずが、柚依の隣に座って二人と話すようになり、いつしか柚依は、瑠奈と待ち合わせをして登校しなくなり、ほんの早く学校に行くようになっていった
そんな二人の変化に、瑠奈の心情が追い付かないまま、日々が過ぎていく事となる
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