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二人が不安を語りながらも大人しく待ち続けていると、外から慌ただしく駆け込んでくる青年がいた

年若く、二人とそう変わらない年齢に見える容姿。白銀の髪に緋色の瞳。透き通るような白い肌をした青年は、二人に向かってぺこりと音が聞こえてきそうな勢いで頭を下げた


「ごめん。待たせたね」


その行動に二人は目を丸くし、互いに顔を見合わせた

二人にとって教師とは、一方的に話をし、時間になったら話が終わる存在であり、彼のようにはっきりと意志表示をする存在ではなかったのだ


「……あの、そんなに待ってはいないわ」


瑠奈が声を掛けると、青年は頭を上げ真っ直ぐに瑠奈を見据えてからふわりとほほ笑んだ


「ありがとう

僕は、イリヤ。今日から、君たちの担任です」


「私は瑠奈。宜しくお願いします」


「柚依。よろしく。先生」


瑠奈は笑みを浮かべながら、柚依は警戒心を隠そうともしないまま、イリヤと名乗った青年に挨拶をする。その様子を捉えたモニターの画面には、エラー表示が無数に展開されていた


「ねぇ、エラーってどういうことだい?」


「用意していた先生じゃないってこと。容姿や、言動が3年先に送る予定の子なのよ」


「あら……。もう少し情緒ってものを育ててからの予定だったのか。しかし、自動で選別するようにしてるでしょ? なんで?」


「わからないからエラーなんじゃない?」


エラー表示を消しながら、データを打ち込み直し興味深そうにのぞき込んでいるヴォルストに言葉を返す。実際、AIが自動で選別し、送り込む担任を変更したのだから、何故こうなったのかがわからない

このまま実験を続けるべきか迷いはしたが、二人には中断という決定が出来ないかった。そして、そのことを時期に大きく後悔する事となる

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