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少女達は、二人でのんびりと景色を楽しみながら、他愛ない雑談を重ね、楽しそうにくすくすと笑いあいながら学校への道のりを進んでいく。
柚依は常に車道側を歩いており、並んでいるようで半歩先を歩きながら、時折振り返り歩を合わせている。後ろにも気を配りながら、前方と左右にも気を配る。持ちなれた動作で鞄も手にしている事から、それが日常であるのだという事はゆうに推測できた
「ねぇ、今日から新しい担任が来るというのは本当かしら?」
「職員室で見かけたわ。なんだか雰囲気の変わった方だったわね」
「ふふ……楽しみね。今度はどんな先生なのかしら?」
楽しそうに会話をしてはいるが、旧世界と観察者たちが呼ぶ世界の者が見たら、その違和感に気づくことが出来たかもしれない。街を歩いているのは二人きり。街並みは整備され、都会的な風景を演出しているが、そこに人の気配はない。存在しているのは、会話をしながら、歩き続ける二人だけだ。もしも、旧世界をもとにしてつくりあげる際に、詳しく知る事が出来たのなら、今頃この街には人が溢れ、穏やかさとはかけ離れた風景になっていたことだろう。だが、彼らはそれを知らず、断片的に手に入れた誤った知識をもとに、この世界を構築してしまった
年齢だけでみれば、10代の少女達。彼女たちの記憶は改竄され、学校という場所に行き、担任という存在と会話をして一定時間が過ぎたら帰宅し眠る
それが日常になってしまっていた。ただただ、服装と、年齢が女子高生と呼ばれたものであることだけで、他には何一つ、共通する事がないのだ
記憶の改竄から、彼女たちは生まれたときから一緒に過ごし、親しくしているとされている。家族構成こそ曖昧だが、それは作り手の家族像が曖昧であり、そこを重要視していなかったからである。だが、少なくとも、互いに存在し、長い時間をかけて歪な二人だけの世界を生きてきた二人には、観察者達が想定していない絆のようなものが芽生えていた
そして、その少女たちの間に芽生えているものが、彼らの求めたものであった事に、彼らはまだ気づいていなかった。
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