Case 2 Ambivalence

1

古びた書物の頁が、夜風に晒されて捲れていく

甘美なる旋律を生み出すわけでもなく、滲み、掠れたインクは乾いた音を立てて剥がれ、一枚ずつ風に乗せて運んでしまう


舞い落ちていく頁を拾い集めて、並べていけばそこに散りばめられているのは、星屑の煌めきのような輝きでも、スポットライトのような眩さでもなく、陰鬱さを抱いた静謐。どろりと纏わりつくような濁った輝きを放つ文字が踊り語りだす


《お伽噺は唐突に終わり

鉄格子の中息を引き取った

夢などいらない

奇蹟は起きない

悲しい現実

目をそらしたまま


千切れた誓いの証

愛憎の輪に囚われ

無垢の象徴に下す

傾いた裁きの天秤

奪い奪われる世界

消えない痛みを抱いて

魂の奥に刻め裏切りと報復の結びを


夢物語は泡沫と化した

窓の無い部屋で息も出来なくて

永遠など無い

未来は孤独

哀しい現実

知らないふりをし続けた


罅割れた誓いの形

愛執の輪に囚われ

清廉の象徴を砕く

墜とされた裁きの鉄槌

奪い奪われる世界

消せない傷を辿って

魂の奥に刻め裏切りと報復の結びを》


物語は、再び喜劇の開幕を告げる

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