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エリスは、アダムよりも好奇心が旺盛であり、知識欲に満ち溢れていた

AIが発する言葉を学び、発音を学んでからはAIの名を訊ねた。AIは設定通り世界を構成した神だと名乗り、二人はそれを信じた。自身の名前について、アダムの名前について等、気になる事を全て訊き吸収していった。エリスと常に共にいるアダムも、エリスと同様に知識を吸収し成長を遂げていった

知識と知能を手にすると、二人はAIの指示がなくても行動をするようになり、食事や排せつ、睡眠に至っては問題なく行う事ができるようになった


アダムは、エリスの欲求を満たすべく動いており、エリスが知りたがるからと物に名前をつけ意味を与えていった

その名前も意味も、ツヴァイ達の知っているそれとは違う物ではあったが、彼らの感覚でつけられた名であり、意味であることに感動し一つも漏らすことが無いように記録に残していく。その日々は、今までのどの生活より充実していた。アダムは時折、何か言いたげにエリスを眺めており、それがツヴァイ達にとっても疑問ではあったが、問題なく生活していた為、特にそれを追求することはなかった


ある日、エリスはアダムが果実を取りに行っている間暇を持て余し、足元の砂をなんと無しに掘り始めた

ただただ砂を掘る動作の為、飽きたら終わるものであるはずだった

だが、エリスは気づく。その砂が、他の場所とは感触が異なる事を。深く掘らなければつかないはずの湿り気を帯びた砂。それがどうしても引っかかった。まるで。そこだけ、掘り返した砂を戻したかのような違和感。エリスは手を動かすスピードを上げ、だるそうに片手で掘っていたものを両手に変え、勢いよく掘り起こしていく


そして、鼻につく異臭


手にあたる砂ではない柔らかさと硬さの混ざった物体


掘ろうとした爪に何か柔らかく臭いものが入り込む


驚いて手を引き上げると、そこには自分と同じような姿でありながら、崩れかけた奇怪な人間が横たわっていた


「神様、これは、何?」


「戻してください。エリス。それが何かを知る必要はありません」


空に向かって訊ねたエリスに、AIは静かにそう告げる

しかし、エリスにはそれが逆効果になってしまった

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