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翌朝

二人が箱庭を眺めにやってくると、そこには目を覚ましたエリスが座っていた

AIは既に活動を開始しており、ログを確認するとどうやらアダムに食料を分け与えるように伝えていたらしかった


やがて、果実を抱えたアダムが戻り果実を渡す

エリスはそれを見てもあまり反応を示さなかったが、男が一つ齧りだすとそれを真似て齧り始める


「見ろ、アイン。AIではなく男を見本にしている」


「アダムの学習能力が高いんだ。AIと同じような行動を示してエリスに教えている。だからエリスにもきちんと伝わるんだ

視覚が学習に大いなる関係性がある。と、はっきりわかったな」


アダムはエリスが食べ終わるのを確認すると、立ち上がった

そして、果実がある木に向かって歩き出す

エリスはそれを眺めていたが、やがて立ち上がり後を追いかけた



それからの二人は、AIから知識を得たアダムがそれをエリスに教えていく方法で成長を始めた

拙いが発声も徐々にできるようになり、自身の名前と相手の名前を使用してなにかしら伝える事ができるようになってきていた


アインが様々な指示をAIに出し、ツヴァイは気になる事を記録しアインに伝える

二人が必死になればなるほど、アダム達の成長も進んでいく

最初に死んでいった二人の事など、ツヴァイ達の頭から消え去っていた


そうして数か月、数年と月日を重ねていくうち、エリスの思考が少しずつ他へ向いていくようになっていった

そのころになると会話が成り立つようになり、エリスはアダムから自分たちのほかにもう二人いたこと。その二人は埋めたことを伝えられていた


何故、埋まったのだろう?


その疑問にはAIが答える


生命活動が停止していたからだ。と


死んだ動物や枯れた植物と同じように自然に還ったのだ。と


だが、エリスの中には疑問が浮かんでいた


何故、自分たちしか会話ができる生き物がいないのだろうか? と


エリスは、二人が想定していたよりも遥かに好奇心に満ちていて行動的だった

その行動的な部分が仇となる事を、誰が予想できただろうか?

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