第15話 ストロベリースライム
ボルツ工房製のオーガの革鎧を手に入れて、そのまま一人でダンジョンに来た。
ちょうどお昼頃だが、1階層の広場は今日も人が多い。
基本的に冒険者は気が荒い。
さらにここルドルのダンジョンは初心者向けなので、イキがった新人冒険者も多い。
広場の近くでは、ちょっとしたイザコザが起きている。
「テメーが俺の足を踏んだっつーの!」
「あー! テメーの汚ねー足なんか踏むかよ!」
「コラ! テメーどこのモンだ!」
16才位のいかにも、田舎から出てきました、って感じの男同士がつかみ合いになっている。
俺はその横を関わり合いにならないように静かにすり抜けて、広場の左の通路に入った。
10分くらい歩いて、
今日はいくつか確かめたい事があった。
まずは、昨日ゲットしたカードの整理だ。
人気のない行き止まりの通路で壁に寄りかかって座った。
自分のステータス画面を開く。
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◆基本ステータス◆
名前:ヒロト
年齢:12才
性別:男
種族:人族
LV: 1
HP: 12.05/12.05
MP: -
パワー:0.74
持久力:0.62
素早さ:-
魔力: -
知力: 70
器用: -
◆スキル◆
【鑑定(上級)】【マッピング】【剣術(初級)】【罠作成】【忍び足】
◆装備◆
ショートソード 攻撃力+2
ボルツ製革鎧(オーガ) 防御力+38
◆アイテム◆
なし
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そして、昨日ゲットしたステータスカードは……。
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◆ステータスカード◆
【パワー上昇(微量)】×3
【持久力上昇(微量)】×50
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【持久力上昇(微量)】は、討伐したタミーマウスの分。
【パワー上昇(微量)】は、迷子になった妨害役の冒険者を捜索した時に倒した赤スライムの分だ。
これを……、消費っと……。
ステータスはどうなる?
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◆基本ステータス◆
名前:ヒロト
年齢:12才
性別:男
種族:人族
LV: 1
HP: 12.05/12.05
MP: -
パワー:0.77 ↑up!
持久力:1.12 ↑up!
素早さ:-
魔力: -
知力: 70
器用: -
◆スキル◆
【鑑定(上級)】【マッピング】【剣術(初級)】【罠作成】【忍び足】
◆装備◆
ショートソード 攻撃力+2
ボルツ製革鎧(オーガ) 防御力+38
◆アイテム◆
なし
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パワーが0.03、持久力が0.5上昇か……。
下の階層に行けばもっと上がるようになるのだろうけど……。
正直かなりじれったい。
冒険者の場合は、強さが稼ぎに直結する。
強ければダンジョンの深い階層に潜れる。強ければ、手強い魔物を狩れる。
手強い魔物の素材は希少価値があるから高く売れるし、魔石もデカイので高額になる。
早く強くなってガンガン稼いで、シンディを奴隷商人から買い取って自由にしてあげたい。
「はー。冷静になれ、冷静!」
俺はため息をついて冷静になるように、自分自身に話かけた。
そうだ、あせるのは仕方がない。
けど冷静さを失っちゃだめだ。
それよりもレベルが1から全然上がらない。
こんなモノなのか?
俺はFランとバカにされ、7日間のルート仕事ばかりやっていた。
だから、冒険者仲間がいないボッチ状態だ。
レベルアップについても情報がない。
今度、師匠かギルド受付のジュリさんにに聞いてみよう。
俺は気持ちに区切りをつけると、ダンジョンの探索を始める事にして立ち上がった。
せっかく一人でダンジョンに入れる様になったんだ。ドンドン探索しないと損だ。
【マッピング】スキルもあるのだし、未踏破の領域で何か発見があるかもしれない。
さて、今日は左のヒロトルートの階段を目指そう。
今日のテーマはあの階段のさらに奥のスペースだ。
あの階段の奥には、どんな魔物がいるんだろ?
ルドルの1階層の魔物はスライムだ。
ギルドの受付のジュリさんに確認したが、普通の青スライムだ。
だけどヒロトルート、通常ルート左側は赤スライムのエリアだった。
なら、赤スライムの奥のエリアには何がいる?
ピンク色のスライムとか?
それとも他の魔物か?
「これはもう純粋な好奇心だな……」
俺は独り言を言いながら、ダンジョンを進んだ。
独り言でも言わなければ、正直1人のダンジョンは何か怖い。
子供の頃、夜トイレに行くのが無茶苦茶怖いのと同レベルの話だ。
「だけど、今は好奇心の方が勝ってますね……」
ダンジョンの通路を階段に向かって進む。
ダンジョンの天井が発光しているので、暗くはないし、通路の見通しは良い。
それでもこの辺り、通常ルートから外れたエリアは、人気がないので不気味だ。
俺の足音と、呼吸と、心臓の音だけが聞こえてくる。
俺は移動を重視して、赤スライムに出会っても戦闘をせずに進んだ。
30分くらい歩いて、階段に着いた。
真っ直ぐ奥へ向かうか、左奥へ向かうか……。
「まずは、真っ直ぐ奥へ進んでみますか……」
俺は警戒しながら、真っ直ぐ奥の方へ進んだ。
防具がオーガの革鎧になって防御力が大幅にアップしているが、油断は禁物だ。
スライム以外の魔物が出て来る可能性もなきにしもあらず……。
あ!?
なんだアイツ!?
赤色にブツブツのあるスライムが、ヒョコヒョコと目の前を横切っている。
見た事が無いタイプだ。
普通の赤スライムとは、ちょっと違う。
「少佐専用か? 【鑑定】……」
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ストロベリースライム
HP: 1/1
MP: -
パワー:1
持久力:1
素早さ:-
魔力: -
知力: -
器用: -
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「弱!」
とりあえず倒しとくか。
俺はショートソードを抜いて、ストロベリースライムを上から刺した。
あっけなく1回の攻撃で倒せた。
HP1なら当たり前か。
ストロベリースライムと言うカワイイ名前と、あまりの弱さにちょっと罪悪感を感じてしまった。
ストロベリースライムを倒すとカードが浮いて来た。
シュッと俺の中に、カードが取り込まれた。
さて、どんなカードだろう?
俺はステータスの裏画面で、カードを確認した。
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◆スキルカード◆
【ドロップ率上昇(小)】×1
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「えっ!? スキルカード!? そんなのがあるんだ!?」
この新しい種類のスキルカードに、俺は驚いた。
俺一人しかいないのに、大きな声を出してしまった。
今まで魔物を倒して出現していたカードは、『ステータスカード』だ。
カードを消費するとパワーや持久力など、ステータスが上昇する。
だが、今回出たカードは『スキルカード』……。
たぶん、スキルを付けてもらえるカードなのだろう。
それも、【ドロップ率上昇(小)】だ。
「これは凄いな……」
俺は、ちょっと感動してしまった。
【剣術】の様に技能系のスキルは、訓練や実戦を通してスキルを獲得できる。
だけれども、ドロップのような運に関わるスキルは、訓練のしようがない。
獲得する方法は、わからないのだ。
それをスキルカードで獲得が出来るのか!
俺は早速【ドロップ率上昇(小)】のカードを押した。
『カード【ドロップ率上昇(小)】を使って、スキル【ドロップ率上昇(小)】を得ますか?
YES / NO』
メッセージが表示された。
もちのロンで、YESを押す。
『【ドロップ率上昇(小)】がスキルに追加されました』
よし!
ステータスのスキル欄はどうなってる?
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◆スキル◆
【鑑定(上級)】【マッピング】【剣術(初級)】【罠作成】【忍び足】
【ドロップ率上昇(小)】new!
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裏スキルかと思ったが、表(おもて)のスキルに追加されていた。
【ドロップ率上昇(小)】は、ダンジョン探索になかなか役立つスキルだろう。
ダンジョン内の魔物は、まれにアイテムをドロップする場合がある。
ドロップされたダンジョン産のアイテムは、レアな物が多く高く売れる。
優秀な装備品や優秀なアイテムの場合が多い。
ドロップ率がアップするのは、ありがたい。
「おお!? 魔石の隣に何か落ちてる。ドロップか?」
魔石を拾おうと液化したストロベリースライムに近づいて、俺は気が付いた。
ストロベリースライムの残した魔石の横に、きれいなピンク色の石が付いた指輪が落ちていた。
魔石と同じ透明なピンクは、澄んでいてきれいだ。
指輪自体は銀かな?
上品でかわいらしい雰囲気の指輪だ。
俺は指輪とピンク色の魔石を拾い上げると、指輪を【鑑定】した。
「【鑑定】……」
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幸運の指輪 幸運上昇(小)
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へー。なかなか良さそう。
ステータスには『幸運』って数値はない。
数値として現れないけれど、何かしら影響のある要素だろう。
ドロップ率上昇と同じだ。
この指輪は、売れば金にはなるだろうけど……。
これはチアキママへのプレゼントにしよう!
ピンクがチアキママに似合いそうだ。
普段のお礼に道具屋で何か買おうかと思ったけど、こっちの方が良い。
俺の冒険者ランクはEランク、アイアンカードになった。
初任給で親にプレゼントする感じでこの指輪を渡そう。
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