第5話 救出板の使い方
ユウキがログインしてゲーム内時間で6日、現実世界では3日が経過していた。
「とうちゃーく。大体予定どおりだね」
首都ストーリアに降り立ったユウキは、先ず救出板の確認に向かった。
外部からの唯一の連絡手段とあって、そこには数多くの情報が寄せられている。
家族を心配する声だったり、現実側の政府対応だったり、現在ログイン中の
その中から
「どれどれ~。うーん……これか!あったあった」
ユウキが目当ての書き込みを探すのにかかった時間は僅か数分だった。
内容は至ってシンプル。
『
100文字にも満たないメッセージ。
それがあったのは、今から6日前の項目だった。
書き込んでから7日が過ぎると、一日単位で自動的に削除されていくのが「3LO」の仕様となっている。
そのためユウキは古いメッセージから探すことで、それほど苦労することなく目当ての書き込みを見つけることができる。
ユウキの実力なら6日もかからずに首都で
「アキラはちゃんと仕事してくれたみたいね」
書き込みの日時が確認できれば、次にすることは相手との連絡だ。
メッセージにあったように、ユウキが向かったのは蝮の皿亭という宿。
なんだか近寄りがたい名前の宿屋だが、その宿を経営しているのは山田と同じ
ドアを開けて中に入ると
「いらっしゃい」
野太い声が店内に響き渡る。
カウンターから声をかけたのは、どう見てもヤのつく自由業の方にしか見えない、スキンヘッドに頬に十字傷のおまけを付けた巨漢だった。
「あれ、私店間違えた?」
前はこんな店員いなかったはず、と思い回れ右して店を出ようとすると
「お客さん、冷やかしだけで帰れると思ってるのかい?ちょっとツラ貸しな」
いつの間にカウンターを越えたのか、肩に手をかけられ逃げられない。
「ウチに何の用だ」
「えーと、ここって蝮の皿亭ですよね?」
「そうだ」
一応確認してみたがあってるらしい。
ならばと、続けて質問してみたが
「ここにカリンって人、泊まってます?」
ピクッ、と男の方眉が動く。
(ああ、なんかヤバそう)
どうやら踏み込んではいけない領域に突っ込んでしまったらしい。
「お客さん、どこでその話を?」
威圧タップリでそう尋ねる男。
だけどここで引いては、救出屋として受けた依頼を果たすことなどできない。
「私、救出屋なんで。ユウキって言ったら分かりますか?」
思い切って自分の立場を打ち明けると
「ああ?ユウキ?そうか……アンタがユウキか。待ってたぜ」
どうやら自分のことを随分と待っていたらしい。
凄くイイ笑顔で奥の部屋へと案内された。
「ここで少し待ちな」
案内された部屋は15畳ほどの広さで、家具は殆どなく椅子だけが幾つか並べられている。
この隙に逃げたらダメかな?なんて考えつつ数分そこで待っていると、現れたのはさっきの巨漢と5人の少女。
「まぁ座りな」
少女たちが座ったのを確認した男は
「手前から簡単に自己紹介しな」
そう促す。
先ず一人目は
「えーと、初めまして。貴女がユウキさんですか?私はカリンと言います。ジョブは魔術師です。よろしくお願いします」
そう言って、軽く頭を下げた。
なんだ、ちゃんと救助者に会えたじゃないか。そうユウキが安堵しようとした時だった。
「こんにちはユウキさん。私もカリンと言います。ジョブは戦士です」
二人目がそう言い放った。
「へ?」
それに続くように
「ウチもカリン言います。よろしゅうに。治癒士やっとります」
「あたしもカリンよ!職業は狩人。よろしくね!」
「……カリン。職は盾士。……よろしく」
次々とカリンが名乗り出る。
そしてふと思い出すアキラが書き込んだメッセージ。
『
と同時に再度肩に置かれる分厚い手。
当然その手はスキンヘッドの男のもので
「困るんだよユウキさん。いくらアンタが有名な救出者でも、せめて救助者の特定ぐらいしてくれないと」
尤もとも言えるクレームを受けるのだった。
「あ、後このお嬢さん方の宿代も払ってくれよ」
「え?この子達、宿代払ってないの?」
「何言ってやがる。そっちの指定でここに泊まれって言ったんだろ?なら、そちらさんが持ってくれると皆思ってるぜ」
「嘘でしょ!?」
「……」
無言で差し出される男の手。
冗談ではないと知ったユウキは
「ああああ!アキラのド阿呆!全部あいつが悪い!帰ったら絶対文句言ってやる!!」
パートナーへの悪態を吐きつつ、予定にない出費を支払う羽目になるのだった。
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