〜盗塁〜

2020年2月14日、世の中はバレンタインデーである。今年は金曜日ということもあり、世の中の女性たちは仕事を早く切り上げ、意中の相手にチョコを渡しに行ったに違いない。かくいう私も例外ではなく、18:00になった瞬間にパソコンを鞄にしまい、脇目も振らずに帰った世の女性の1人である。


少し時間を戻そう。年末に起きた失恋をバネに自分磨きに邁進した私に新しく好きな人ができたことは先日お伝えした通りである。幸い、向こうも満更ではないようで、私がアプローチをするごとに、第三者から見てわかりやすく舞い上がっていた。私もそんな彼を「バカだな。」と思いつつ喜んでいた。ただし、2人で仲良く浮かれていたこと、これが最大の誤りだった。。。


『今回の恋は私たち2人だけの問題ではなかった…。』


という事実に気づくのは、手遅れになったあとだったわけである。

正確には2人だけの問題で終わらないことは最初から魔女の助言によりわかっていた。ただ、のんびり淡い恋心を楽しんでいた愚か者の私は、付き合ってから本格的に向き合うことになるであろうと思っていたのである。


バレンタイン3日前に「チョコを渡したいから会えるかな?」と連絡し、当日の夜に約束を取り付けた私は、緊張しながらも付き合うこと前提で関係の進め方を考えていた。私は恋愛事情はなかなか疎いのだが、チョコを渡すと伝えた後の彼は誰から見ても浮かれていたし、複数提示した候補日に対して、バレンタイン当日かつ金曜日の夜に会おうと指定してきたわけである。私としては当然その後ディナーを済ませて、彼の家に泊まるつもりでいた。(もちろん宿泊セットなんて持ってきてないけど、、、気持ちの問題である。)


会う3時間前に彼からLINEで「1時間待ち合わせの時間を後ろ倒しでもOK?」とテンション高めの連絡がきたので、私は何も疑うこともなく「OK!」と返事をした。


私は化粧を直して、身なりを整え、5分前に待ち合わせ場所についた。

彼は2分遅れで登場したが、その瞬間は私も緊張していたこともあり、彼の空気がおかしいかどうかは全く判断できていないし、今思い出してもわからない。

ただ、、、

チョコを渡した後に、「取り寄せていた商品を取りに百貨店に行かないといけないんだ。」と言われたわけである。私は意味がわからず、「は?」と脳内で唱えた。(もちろん本人にそんなこと言ってないし、笑顔で交わしている。)


その後、駅に向かって歩いていたが、「途中でタクシーに乗るかも。」と言われ、私は益々意味がわからなくなった。「どうしたの?」と5回以上聞かれたが、私はなんとなく雰囲気の関係で全て回答を濁していた。途中で本当にタクシーに乗り、会ってすぐに別れることになる。


混乱している私は、のんびり焼肉を頬張っていた魔女に連絡をし、魔女のもとに向かった。向かう電車の途中、魔女の指示で彼にLINEをし、カマをかけた。


すると・・・彼のバックの大物政治家がどうやら反対したようだった。

彼のバックに大物政治家がいることは最初からわかっていた。今日私と会う時間が1時間遅れたのは彼が大物政治家に呼び出されたからであり、そこで彼は私とのことに浮かれていたことをこっぴどく叱られ、私と関係を進めることを反対されたようだった。


彼としては、大物政治家の下から抜けたいという気持ちも少しあったようだが、今の彼に大物政治家からの反対をひっくり返す力も、彼の下から抜ける勇気も覚悟もないことは私の目からも明らかで、私は返す言葉がなかった。。。


ただし、魔女からの助言で、彼が一生私を忘れぬよう、最後のメッセージを送ることになる。それを十字架に彼はこれからも生きていくようだ。


そんな彼に対して残念ながら私はできることが何もない。正直大物政治家のことは嫌いになったり、精神的な疲労と心に傷を追ったが、切り替えて前に進むしかないのである。私自身、大物政治家の本気さを舐めていたし、普通に恋愛を楽しみたかった。でもそれが許されるほど、甘くはなかった。


こうして私は、またまた波乱万丈のエピソードを1つ増やして、明日を明後日を迎えることとなる。


それもこれも、やはり不二家の変わった家庭環境がそうさせているのであろう・・・。再度過去に戻ろうか。




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