【1回表】4球目

麻子は不二家の長女として産まれた。産まれた時にお産方法がよくなかったのか、骨盤がずれて、足の長さが異なる。そのことが原因で決して運動神経が悪いわけではないのに(むしろいい方)若い頃、何もない場所で転んでいたという。55歳になった今では杖をお供に生活する日々だ。今思えば、幼少期の時点で足の長さの違いや骨盤のずれを解消できなかったのか、なぜ病院に連れて行かなかったのかという疑問がわくが、その辺りは全く解明できず、不二家7不思議の1つである。(きっと7つで終わらないし、他の6つはこれから考えるのだが。)


麻子が麻子のお母さんとどのような関係性だったか、全く知らない。(家の中でそのような話題を出すという空気はなく、幼い私はそれを聞くという頭にもならないのだが。)麻子のお母さんが病気で他界して、お婆ちゃんに育てられた。父は前述した通り、姉2人の生活リズムと全く合ってなかったので、麻子は父に育てられた覚えはないとはっきり言う。


麻子は父とあまり仲良くない。何がきっかけで歯車が狂ってしまったのか…ボタンの掛け違いが積み重なったのか、はたまた父が大きな失態を犯したのかはわからないが、麻子は父に事あるごとに怒鳴られ、手を出されていたようだ。大人になっても一度大きな喧嘩をしたようで、麻子は「もう、うんざり…。」と言っていた。一度父と姉の関係を修復しようと、猫パンチのような微々たる力で色々試みたが、「いい迷惑。真奈の大人になってからの反抗期。」とこちらに両者から火の粉が飛んできた。つまり、開けてはいけない【パンドラの箱】なのだ。

あとあと聞いた話だが、麻子の息子の律の件でも、父と麻子は喧嘩をしたようだ。確かに父はいい歳をして大人気ないところがある・・・。


少し時系列を戻して、麻子の高校生の時の話をする。麻子は高校の時に交際をスタートした初彼と結婚した。なぜ彼だったのか聞いたところ、いつも隣にいたからと言っていた。つまり、父との関係が悪く、家の空気が悪かった麻子のことを全て事情を知った上で隣で支えていたということだろう。本当は別に好きな人がいたようなのだが

彼はそれも知った上で交際をスタートしたとのことである。麻子のことがよっぽど好きだったようだ。結婚して20年以上経つのに、今でも麻子のことが大好きで、出張で家に帰らない日があろうものなら、メールの連絡が絶えないようだ。(よかった、よかった。)


麻子は勉強が好きだったので、高校を卒業して進学したかったようだが、父に金銭面含めてこれ以上頼るのが嫌だったという理由で進学を諦め、就職して上京した。(どんだけ仲悪いんだという突っ込みはいくらしてもらっても構わない。)


25歳の時に結婚し、しばらくは子供を持たず2人で生活していたが、35歳の時に長男である律を出産した。前述したように、男の子の誕生は家族中から喜ばれた。ただ、その後長女を出産したが、この世に誕生して、間も無く他界してしまった。お腹にいた頃から病気を発見した。非常に確率の低い病気で、誕生してすぐにオペ室に入った。小さい命ながらオペに立ち向かい、その日は無事に乗り越えたが、集中治療室に

息を引き取った・・・。名前は【桃】という。


その後は、一家で仲良く暮らしており、時折姉として私のことも気にかけてくれている。父に対しても、嫌悪感はありながらも、表に出すことはなく、律の顔を実家に見せに行ったり、「家族としての義理は通している。」と麻子はいう。


しかしながら、父も母もこの麻子の大人の対応に乗っかっており、どこまでありがたみを感じているかはわからない。


一旦ここで句切ろう。次は菜子の話だ。


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