【1回表】3球目

次に父の話をする。父の名は『俊』という。本名は『とし』だが、周りの知人からは『しゅんさん』と呼ばれており、晩年は母や姉からも『しゅん』とあだ名で呼ばれていた。父は1歳の時に祖父を戦争で無くし、祖母に女で1つで育てられた。すでに伝えたが、3人姉弟の1番下で祖母から相当な愛情を受け、甘やかされて育ったと聞いている。女に囲まれて育ったため、幼少期の遊びはキャッチボールではなく、あやとりや折り紙であり、いわゆる、少し前に流行った【オトメン】である。


この辺りで少し叔母の話をしよう。長女の叔母は母子家庭の大変さを直で受けた苦労人である。義務教育を終了し、一刻も早く家計を支えるため、就職しようと看護学校に通い、看護婦になった。しばらくは次女の叔母と父の助けをしていたと聞いた。その後、鉄道会社に勤めていたおじさんと一緒になり、女の子を2人設けている。(そうそう!ここも女だったw)私は実はこの叔母のことはあまり得意ではない。(この話は忘れなければ…後ほどゆっくり説明する。)一方で長女と次女、特に次女は叔母と仲が良かった。

次女の叔母は当時それなりの才女だったと聞いている。大学に進学するべきだと高校の恩師から強く押されていた上に本人も進学を望んでいたが、父が戦死し、国から頂くお金で生活をしていた上に、弟の学費も考慮した次女は泣く泣く進学を諦めた。その後上京し、喫茶店で働いていた時に、都内で会社を営んでいたおじさんに見初められ、社長夫人となった。当時の不二家からすると、玉の輿だった。その後、1人の男の子を設け(お、ここは男だぞ!)名門私立大学の付属中学に入れ、会社を継がせている。次女の叔母は、漫画で言うならば、ドラえもんに出てくる【スネ夫の母系】であり、叔母もブランドや肩書きなどが大好きである。余談だが、私が県内でそこそこ有名な進学校に入学できる実力があったこともあり、叔母は私のことをそれなりに可愛がり、同じくブランドと肩書き好きの母はこの叔母のことは「めんどくさいから。」と口で言いながらも、長女の叔母より好きそうであった。一方で高校卒業して進学した姉2人は叔母の息子である従兄弟と歳も近いこともあり、比較されて嫌な思いをしたそうで、この叔母のことは好きではない。

父の話に戻ろう。父は高校を卒業して、国営企業に勤めた。その後、しばらくの間政に精を出すことになる。父は姉2人のお母さんと結婚して姉2人を設けた。実のところ、私は小さい頃から母が後妻であることをはっきりと認識していたが、姉2人のお母さんのことはよく知らない。政をやっていた関係で不二家は人の出入りが多かったため、母が後妻のことは望まなくても自然と耳に入ってきたのだろう。ただ、幼い私に姉のお母さんのことを話す人はいなかったようだ。(きっと後妻である母が強烈だったのもあるだろう。)ちなみに姉2人のお母さんが病気で他界してから母が後妻として不二家に入るまで、祖母が姉2人の面倒を見た。父が政に夢中になっていたこともあり、姉2人と完全にすれ違いの生活をしており、特に麻子は父に育ててもらった記憶はないと言っている。どうでも良いが、菜子は発月経がきた時、麻子が面倒見たようである。父が面倒を見なかっただけではなく、後妻である母の存在が大きいと思うが、父と麻子の間には今でも見えない大きな亀裂がある。ちなみに父も罪悪感があるのか、菜子のことは非常に甘やかし、こちらはお金を渡すことで解決しようとしたらしい。おかげで菜子は成人した時、ATMでお金のおろし方もわからないくらい世間知らずだったようだ。(いずれにしても子育てをしていないじゃないか。)


姉の話がだいぶ出てきたのと私の登場に時代が近づいてきたので、一旦ここで終わりにする。


次は麻子の話をしよう。

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